第78話 カミングアウト

 師匠が私と同じ転生者だと知ってからは、2人で修行をする時は関西弁の会話を楽しむようにしてるの。転生の事は当分は2人だけの秘密にして、機を見計らってミナ先生とアリシャに報告する事となった。


 そして、月日が流れて学力対抗戦に向けたクラスの代表を決める模擬試験が行われた。今日はその結果発表で代表メンバーが決まる。


「はい、模擬試験の採点が終わったから、上位5名はここで発表するよ」


1位 アイマール 300点

2位 アリグリア 265点

3位 テレーサ  255点

4位 キンバリー 250点

5位 マナカ   240点


 ジュリエッタ先生の結果発表を聞いて、教室内が少しザワついた。キンバリー様が4位に入って対抗戦のメンバーに入ったからだね。


 私はキンバリー様の方を『チラッ』と見てみると、両手を軽く握る姿が見えた。


(1人でよく頑張ったね。おめでとう!)


 この日の授業が終わって、キンバリー様が部屋へ戻る前に、学力対抗戦でチームとして頑張ろうと声をかける。


「キンバリー様、学力対抗戦ではAクラスの為に頑張りましょう。対抗戦まで一緒に勉強しませんか?」

「私は馴れ合わなくても結果を残せるのよ?そんな事をする理由がないわ!」

「そうですか……」

「時間が惜しいので失礼するわ。パメラ帰るわよ!」

「あっ、はい」


 専属メイドのパメラに声をかけると部屋へと戻って行く。パメラは私に頭を下げてから後を追ったけど、その時の表情は申し訳なさそうな感じだった。


 私とキンバリー様の会話を、少し離れた場所で確認していたグリアが近寄って来て、キンバリー様の態度が気に入らなかったようで、かなりご立腹な感じの口調で話しかけてきた。


「相変わらず腹の立つ娘ね。ただ、結果を出したのは褒めてあげるけどね」

「まぁまぁ、ちょっと落ち着こうね。私達と違って1人でよく頑張ってると思うの。私達も負けないように頑張ろう」


 グリアをなだめながら教室へ戻って、クラスメイト達と勉強会をしたの。


§パメラ視点§


 お嬢様と部屋へ戻ると、先程までとは打って変わって表情が明るくなる。


「やったわよ!対抗戦メンバーになったのよ!これもパメラのおかげね。ありがとう」


 笑顔で喜ぶお嬢様を見て、素直に喜べない自分が居た。対抗戦メンバーになれたのは、アイマール様のメモのおかげだから……その笑顔は私に向けるのではなく、アイマール様へ向けるべきものなのに、私は意を決してその事を伝える。


「お嬢様、黙っていた事があります」

「なにかしら?」

「私が教えていた勉強なのですが……全てレジストリー嬢が作ってくれたメモでした。お1人での学習は大変だろうと、お嬢様の為に用意してくれたのです……」

「そんな……」


 お嬢様に怒られると思ったけど、驚きのあまり言葉を発する事もできないほどだった……



 

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