第77話 転生者

 師匠も笑顔になってたけど、その笑顔はいつものものとは違う気がした。


「私はこの世界に転生して、初めて自分以外の転生者に会う事ができたよ」


 師匠の口から『転生』の言葉が出た瞬間、いつもと違う笑顔の理由が判った。師匠アナスタシア.アリスターは私と同じ転生者だったのだ。


「えっ、師匠が転生者?」

「そうだよ。私は日本の大阪という所に住んでたんだよ」

「私も同じ日本です。住んでたのは隣の兵庫県の神戸でした」

「ほんまに?同じ関西人やったんや」

「うん、師匠はいつこっちに来たん?」


 同じ関西人だった事もあり、師匠の話し方が関西弁になった。久し振りの関西弁を聞いて、私も釣られて関西弁で話した。


「うちは、1970年に病気で死んだら、こっちの世界で貴族の娘として生まれてん」

「そうなん?うちは2020年に車に拉致されて、巻き込まれ事故で死んでんけど、転生したと気づいたんわ、あの男に酷い目にあった時やってん」

「そうかぁ〜、それやったら転生に気づいてへん人もおるんかも知れへんね」


 気づいてるかどうかは判らないけど、1人転生者の可能性がある者を知ってるので、その事を師匠に伝えておく。


「あと、イーブルやけど、あの人も転生者の可能性があんねん。理由は……」


 私は昨晩の夢で見た転生前の最期に起こった事を包み隠さず話して、教授とイーブルに似過ぎていると伝えると、可能性はあるけど1つの疑念を口にした。


「そんな事があったんやね。ただ、イーブルとマールの年齢が離れすぎてるんが気になるな」


 同時に転生してるなら同年代のはずなので、師匠の言う事は最もな意見だった。ただ、前世のラノベ小説に異世界転生ともう1つの異世界転移と言う話があった事を思い出した。確か、教授は異例の速さでその職に就いて、あの時点で30歳だと言ってたように記憶してる。イーブルが転移者であれば年齢が離れている事も納得できる。


「イーブルは転生者じゃなくて、転移者の可能性が高いと思うねん。教授の年齢は30歳やったから、今の年齢差の説明がつくもん」

「新しく生まれるんやなくて、そのままの状態でこっちへ来たんか……イーブルの生い立ちとこれまでの軌跡を調べてみるわ」

「うん、お願い」

「なぁ、辛気臭い話は終わりにして、うちの知らへん未来の話を聞かせてくれへん?」


 せっかく同じ転生者に会えて、しかも50年も未来から来たと聞けば、聞きたい事がたくさんあるよね。


「うん、先ずは1970年から2000年は、まだ生まれてへんからあまり詳しくないねんけど、先ずは大阪万博から1970年代は始まったんかな……」


 その後は修行は中断して、師匠の知らない未来の話をしながら楽しい時間を過ごしたのだった。

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