第76話 新しい理魄

 アリシャのおかげで朝までぐっすり眠れた。


 ベッドから起き上がり、リビングに向かうと既に朝食の準備が出来あがっていて、最後にスープを温めているアリシャに後ろから抱き着く。


「おはよう、昨日はありがとう」

「おはようございます。ぐっすりと眠れたようで何よりです。スープが出来ましたので、朝食にしましょう」

「うん」


 アリシャと一緒に朝食を済ませた後は、、師匠の元へと修行に向かう。引き続き応用第4段階の訓練になるけど、今日は希少金属のミスリルを使って、新しい理魄を作る事に挑戦する。


「おはようございます」

「おはよう、これがミスリル塊だよ。マールの好きにして良いからね」

「ありがとうございます」


 私は師匠から5kgのミスリル塊を受け取り、触れながら質感などを確認する。


「触った感触は他の金属と変わりませんね」

「そうだね、特徴は知ってると思うけど、理魄との相性が良いんだよ」


 触れた感想を伝えると、師匠からは文献に記されてた内容と同じ説明があったので、ミスリルに理魄を流してみる。


 火の理魄を流せば赤くなって温度が上昇して、水の理魄を流せば青くなったけど、高温状態だった為に蒸発して蒸気が出た。その後も風と雷の理魄を流してみたけど反応は同じだった。


「浸透しやすい理魄という物はなくて、全ての理魄をスムーズに通しますね。私の限界まで理魄を流してみても良いですか?」

「好きにして良いよ」

「ありがとうございます」


 私は4つの理魄を限界まで流してみた。


 火の理魄は80%ほど溶解し始めて、100%では完全な液体となった。理力操作の応用で色々な形状に変えて最後は元の形に戻す。金属だけあって高温にすれば溶解するので、ミスリル製の武器を所持した時はこの事に気をつけないとね。


 水と風の理魄は限界まで流しても形状が変わる事はなかったけど、雷の理魄を流すと50%辺りで溶解ではなく、細かい粒状になって流すのを止めると、『サラサラ』と粒状のまま机の上に落ちたのには、私も師匠も驚いてしまった。


「これは凄い発見だね」

「はい、この粒状ミスリルを使えば、ミスリル合金が簡単に作れそうですね」


 私が合金と言うと、師匠は不思議な顔をしながら合金について説明を求めたので、前世で得た知識で知った範囲で説明をした。


「なるほど、ミスリルほどではないけど、理魄を通す事ができる金属を作れるんだね。長生きはするもんだ!こんな大発見の場に立ち会えるなんて嬉しいよ」

「ミスリルも他の金属との違いは理魄の浸透率くらいで、性質はほとんど同じだと理解しました。これならミスリルの理魄を作れそうなので、早速試してみますね」


 私は体内にコアを作って、属性の理魄を作った時と同じようにコアをミスリル化してから、全身をミスリル化してみた。


『キィーン』

「マ、マール!それは?」

「これは、全身をミスリル化してみました。私が触れても金属感が判らないので、触れてみて確認をしてください」

「判ったよ……」


 流石にメタル化した金属人間が現れて、簡単に触れる事に少し戸惑いがあるようで、恐る恐る私の身体に師匠の手が触れる。


「凄いね、完全に金属だよ。身体の一部を変化させるどころか全身を変化させるなんて、応用第4段階はたった2日でクリアした訳だね」

「そういう事になりますね」


 私は元の姿に戻って、笑顔で師匠に返事をすると、師匠も笑顔になってた。ただ、その笑顔は何かいつものものとは違う感じがしたの。

 

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