第74話 応援第4段階

 選抜委員会が終わった翌日、会合の内容をクラスメイトに報告すると、学力対抗戦が終わるまでは学力重視の勉強会をする事になった。


 授業が終われば勉強会をする日々が続く中の週末に、キンバリー様が近くにいないタイミングを見計らって、私は専属メイドのパメラに話しかける。


「パメラさん、あれから私のメモは役立ちましたか?」

「えっ、えぇ、貴女のおかげで勉強は捗ってます。その事は感謝してます」

「これ、学力対抗戦の範囲です」


 そう言ってから新たなメモをパメラへ手渡す。前は受け取るのに躊躇っていたけど、今回は普通に受け取ってくれたのは、私の事を少しは信頼してくれたって事だよね。


「ありがとうございます。でも、こんな事をしていると、クラスの輪から外されるかも知れませんよ?」

「一応、みんなには言ってるから大丈夫かな?あまり長話をしてるとキンバリー様に見つかるので、これくらいで」


 私がそう言ってから離れると、パメラは頭を軽く下げていた。


(急ぐ事はない、ゆっくり歩み寄れればいい)


 そして、週末になり師匠の元で修行を行う。


「今日はマールに合わせた修行を考えたから、その修業をするからね。そうだね、応用第4段階といったところだよ」

「応用第4段階?」

「あぁ、マールの〚創造変換トランスフォーム〛だからこそできる事だよ」

「私だから出来ること……」

「あぁ、これからその事を説明するよ。私には再現できない、あくまでイメージのみの説明になるから、説明に合わせてマールが実際にやる事になるからね」

「はい」


 私の才覚〚創造変換トランスフォーム〛だからできる事を考えつくなんて、師匠は本当に凄いと思った。期待に応える事ができるように、師匠のイメージをしっかりと変換しないとね。


「先ずは形態変化だよ。手のひらを前へ」


 そう言った後、師匠は短剣を手にしてから、手のひらを短剣へと形態変化をするイメージを伝えてくれた。私は目の前の剣を見ながら、手のひらを剣に変えるイメージをしながら形態変化を試みるけど、鋭利な短剣とは程遠い物だった……


「これは、難しいですね……理魄に変換するのは、理魄と直結させるので簡単なのですが、見た物に変換するのはイメージし難いです」

「そうかい、理魄に変換する事とは全く違う訳だね。難しいけど無理ではない感じなんだね?」


 そう、難しいけど無理では無いと思っていた。失った理魄を〚創造変換トランスフォーム〛で作った時も簡単ではなかった。だから剣の素材を理解して金属の理魄のような物を作ればできるはずだと思うからね。


「はい、剣の素材である金属を理解して、火の理魄みたいに金属の理魄を生み出せれば、短剣だけでなく全ての武器に〚創造変換トランスフォーム〛が可能になると思います」

「なるほどね、それなら希少金属を用意するから、その金属で理魄を生み出す事にしようか。今日はここまで、明日からは希少金属について理解する事にするよ。とりあえずミスリルからだね」

「そんな貴重なものを?」

「これでも妃爵だから問題ないよ。マールは文献でどんな物かを確認しておくんだよ」

「はい」


 こうして、応用第4段階初日の修行を終えて、希少金属の文献にあるミスリルを学んで翌日に備える事にした。



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