第72話 お泊り会③

 みんなで顔を見合わせて大笑いをした後に、下級貴族でも子爵家なら、夜会やお茶会に出席をする機会が結構あるんだと思った。男爵家は戦場で武功を挙げないと価値がない、お父様は武功を挙げる事なんてなかったので、そんな場へ出る事はなかったと思ってしまった。


「へぇ〜、うちは武功のない男爵家だったからさ、そういう会には無縁かな?実家に帰ったわけじゃなから判らないけど」

「男爵家だったって、今は違うみたいに聞こえるわよ?」


 私が思わず口にした言葉にグリアが反応する。そういえば転籍した事を伝えてなかった。少し遅くなったけど、この場で転籍した事を伝えると、当然だけど全員が驚いた。


「実は、休暇中にレジストリー子爵家に転籍したから、もうレジストリー男爵家は実家じゃないんだよね」

「えっと……親戚に子供が居ないから転籍になったという事なの?それなら普通は養子縁組よね」


 グリアの言う通り、親戚の家へ移るなら養子縁組になるので転籍とは言わない。そもそも転籍なんて滅多にない事なので、今回の経緯を説明する事にした。


「学院長のアリスター妃爵様が、レジストリー男爵家の財政難が、私のこれからの成長を害すると判断されて、レジストリー子爵家への転籍命令を出されたんだよ。その子爵家はみんなも知ってるミナ先生なの」

「「えぇーー!」」


 妃爵が私の将来を考慮して転籍命令を出した事や、転籍してミナ先生の娘になったんだから驚くよね。それにしても凄い大声だ……


「妃爵様とお話する機会があるんだね……凄い」


 少し間をおいて、アンナマリアが話しかけてきた。王家の皇太后でありながら数多くの武功を挙げて、妃爵という特別な爵位を与えられたこの国の象徴的な存在で、全ての女性の憧れだからね。


「マールが妃爵様の弟子に迎えられた事が、今回の転籍に繋がったのかも知れないわね」

「「えぇーー!」」


 グリアの言葉を聞いた3人は、さらに大きな声で驚いた。流石に隣の部屋から苦情が来ないか心配になる……


「ははっ、武術対抗戦を見学された時に気になったそうで、今は弟子として修行をしてるの。アンナマリアに見せた理力操作も、日頃の修行の成果なんだよ」

「そうなの?私達にも理力操作を見せてよ!キャメリアとクリスティも見たいよね?」

「「うんうん」」

「良いけど、水玉を出すけど触っちゃダメだからね?水浸しになって着替える事になるから」

「「OK!」」


 みんなが注目する中、私は水玉を出して理力操作を披露したけど、触っちゃダメだと言ったにも拘らず、グリアが水玉に触れて全員がびしょ濡れになった……

 

 その後は、流石に4人は着替えがないので、みんな裸のままベッドに入って話を続ける。グリアは着替えがあったけど『私も裸の付き合いをするわ』なんて言って裸のままベッドに入り込んでいた。色々な話をしてると知らないうちに寝落ちして、楽しいお泊り会を終えたのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る