第71話 お泊り会②

 湯浴みを終えてから夕食を済ませると、そこからが本番開始で女子トークが始まる。


 私達は全員が貴族令嬢なので、女学院を卒業するまでに婚約を済ませる者が出てくる。この5人の中では伯爵家令嬢であるグリアが、その最有力候補といったところなので、キャメリアとクリスティの双子はその事を知りたがった。


「私の婚約はなかなか決まらないと思うわよ?だって実家でも貴族の間でも『出来損ない』と言われてるから、両親も私の婚姻話を積極的に進めないもの」


 婚姻に関しては、直ぐに決まる事はないと断言するグリアに、私達は入学して委員を選ぶ時にキンバリー様が口にした事を思い出した。ただ、下級貴族の私達までその噂が広まってるのか、その事が気になったので3人に聞いてみた。


「その噂ってさ、下級貴族にまで広がってるの?正直に言うけど私はその噂を知らなかった」

「私達も知らなかったよ。クラス分けが決まって、キンバリー様から聞いて知ったんだよね」


 双子の2人は知らなかったみたい。ただ、アンナマリアは申し訳無さそうな顔をしながら私の質問に答えた。


「私の父は文官でシュスター伯爵の直属の部下だから、その噂を知ってたから入学前にグリアの事は聞いてたの。キンバリー様からもその話を聞いて最初は信じてたけど、実際に接すると違うって判ったけどね」

「そう言ってもらえると嬉しいけど、マールと出会って変わったと思うのよね。ハッキリ言えば、平民と仲良くする事なんて考えてもいなかったわ。マールの優しさに触れていくうちに考え方が変わったのよ」


 アンナマリアの言葉の後に、グリアは私との出会いが自分を変えたなんて事を言う。キッカケになったかも知れないけど、本質が優しいから変われたんだと思う。


「そんな事よりも、マール以外の3人は休暇の時に実家へ戻ってるんだから、夜会やお茶会に出たんじゃないの?」

「私は地元の下級貴族で開かれた夜会が1回と、お茶会はキンバリー様の家で開かれたものに2回出席したくらいかな」


 アンナマリアの言葉を聞いて、クリスティが少し身体を反らしながら反応した。


「いいな!私達は地元の商会長主催の夜会と、その夫人主催のお茶会に出ただけ……」

「じゃあ3人はさ、その場で子息の紹介があったり、興味が湧いた方は居なかったの?」


 グリアが少し身を乗り出して、異性と知り合ったのかを聞いた。私は別として年頃の女子ならその辺りは聞きたくなるのは仕方ないよね。


「「ナイナイ」」

「私には兄が居るからさ、両親が必死に売り込んでたけど、なかなか見つからないよ」


 声を揃えて返事をした後に、アンナマリアが答えたけど貴族の婚姻事情って大変みたい。続いてキャメリアも答えたけど同じようなものだった。


「うちなんて貴族主催じゃないからさ、相手を見つける=平民落ちになるからね……後期は地元が同じ平民のクラスメイトから、良い人が居ないか探りをいれるつもりだよ」


 キャメリアの冗談混じりの言葉の後に、みんなで顔を合わせて大笑いをした。





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