第69話 親子関係の変化

 キンバリー様に声をかけ始めて週末を迎える。


 休日は午前は師匠の元で理魄の授業にうち込む。この日はミナ先生と一緒に応用第3段階の修行で、互い距離を取って射出しあって相殺するという、実戦に近い修行を行っていた。


「はぁ、はぁっ……もうダメ、理力が切れる」

「はぁっ、お疲れ様です。私はまだ余力があるので的撃ちを続けますね」


 ミナ先生は理力切れになったので、私は残りの理力を使い切る為に的撃ちをする事にした。理力が尽きる辺りまで消費する事が、理力総量の底上げになるので、基本的に使い切る事にしてる。


 私が的撃ちをしていると、師匠が隣りにやって来て、キンバリー様に声をかけてる事で話しかけてきた。


「クラスで孤立した娘に声をかけてるらしいけど、どんな感じなんだい?」

「よくご存知ですね。今ところは一方通行ですが、直ぐに結果が出るとは思ってませんよ」

「クラスメイトの多数は、仲良くする事に否定的だとも聞いてるけど、マールまで浮くんじゃないのかい?」


 学院長なのでジュリエッタ先生から報告が入って、私の事を心配してくれるのだと思う。その話をしていると、ミナ先生も気になってたようで話に加わってきた。


「クラス全員が纏まるなんて無理なんじゃない?私が学生の頃も、クラス内でグループに分かれてたよ。マールはよくやってると思うけどね」

「グループに分かれてるなら良いんですが、今はキンバリー様が1人で孤立してるの。私は孤独を知ってるからどうしても放っておけないです」


 私の言葉を聞いたミナ先生は、目を細めながら私の頭を『ポンポン』としてから胸元へ抱き寄せた。『あっ』と一瞬思ったけど、今は甘えるタイミングだと思いそのまま身を任せた。


「私の娘は本当に優しい子だね。ただ、自分を犠牲にしちゃダメだからね?それだけは約束して欲しいかな?」

「はい、約束します」


 まだまだ、ぎこちない関係だけど、少しずつ親子の絆を築けてると思うようになってきた。言葉では上手く言い表せないけど、アリシャとは全く違う母の愛を感じるのだった。


 その後は、的撃ちで理力を使い切ってたので、午前の修行は終了して寮へと戻った。


 昼食の後はアリシャと武術の訓練をするんだけど、この日はグリアとキャメリア達も一緒に訓練する事になった。


 授業の延長線のような感じの訓練は、とても楽しくて時間は『あっ』という間に過ぎて、日が傾いてきたので訓練を終了して、寮へと戻る途中にグリアが、みんなを部屋へ招待すると声をかけた。


「ねぇ、明日も休みだしさ、今日は私の部屋に泊まりに来ない?」

「「いいの?」」

「一緒に食事をして、その後は普段する事のないような話を楽しみましょう」

「「賛成!」」


 私達はお泊り会をする事になり、急ぎ足で寮へ戻って準備をしてから、グリアの部屋へと向かったのだった。



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