第67話 本当の優しさとは

 キンバリー様の1週間の謹慎処分が明けて、教室へ現れたけど周りの視線は冷たいものだった。


 これまではクラス委員の4人で固まってたけど、武術対抗戦での出来事でキャメリアとクリスティが、そして謹慎の原因となった日からは、アンナマリアが去ってしまい孤立する状態になってしまっていた。


(なんとかしないと、1人は寂しいよね……)


 その日は、話し掛ける事はせずに様子を見てみたけど、授業が終わっても視線は前を向いたままで、私達の方へ目もくれずに教室を後にして寮へ戻るだけ。こんな生活が続けば女学院で学んてる意味がないと思い、クラスメイトに私の想いを伝える事にした。


「キンバリー様、あんな感じで1日を過ごすのは辛いよね……なんとかならないかな?」


 私の言葉を聞いたクラスメイト達は、呆れた顔をしていた。そんな雰囲気の中でグリアがため息をついてから話しかけてきた。


「本当にマールは甘いわね。キンバリーの身勝手な行動で孤立したのよ?」

「うん、そうなんだけど……1人は寂しいよ」


 私は女学院に入学するまでは、家族を含めてもアリシャ以外との交流は全くなかった。特殊な事情があった当初はなんとも思わなかったけど、入学をしてグリアに出会い、クラスメイト達と仲良くなる事で人生が開けた気がした。


 キンバリー様は、これまで人に囲まれて賑やかな生活をしてきてたはずなので、そんな状況からメイド以外との交流が絶たれれば、その寂しさは私が味わったものとは比べ物にならない。


「私はずっと1人だったの。女学院でグリアやみんなと出会った事で、毎日が凄く充実して楽しいよ。そこから1人だった頃に戻ったら、その寂しに耐えられる自身がないよ……」


 私の言葉を聞いたグリアは『はっ』とした表情になり、今の自分がキンバリー様の状況になったらと考えたのだと思った。


「確かに、私もマールと出会ってから毎日がとても楽しいわ。昔に戻るのは耐え難いわね……」

「でも、キンバリー様は私達平民を同じ人とは思ってないよね?あの目は物を見る感じだよ」


 グリアの言葉の後に、平民の生徒が感じるキンバリー様は貴族至上主義者で、平民を人ではなく物のように思ってるはずだと言った。


「あの人は、自分より階級が下の貴族は従者だと思ってるよ。だから平気であんな事を……」


 アンナマリアも頬に手を当てながら、キンバリー様の階級による差別意識を口にした。


 他のクラスメイト達も、キンバリー様に対しては同じように思ってるようで、大半が頷いている事を考えると対応の難しさを実感した。


「みんなの思いは判るけど、それでも1人で居るのは寂しいよ……色々とクリアする事が多いけど、変わるチャンスをあげようよ?」

「マールは本当に優しいわね。ただ、あの子が歩み寄って来ないとどうにもならないわよ?みんなもそれなら良いわよね?」


 グリアの言葉にみんなが頷いてくれた。


「うん、そうなるように頑張るよ」


 私はキンバリー様に積極的に声をかけて、クラスの輪に加わってもらう事を働きかける事にしたの。


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