閑話 孤立するキンバリー

 いつもと変わらない朝を迎えたはずだった……


 教室へ向かう時間なのに迎えが来ない。キャメリアとクリスティは武術対抗戦以降離れたけど、アンナマリアは必ず迎えに来ていたのに……


(体調ても崩したのかしら?)


「お嬢様、教室へ向かわないと授業に遅れます」

「そうね、行くわよ」


 少し急いで教室へ着くと、私はその光景に目を疑ってしまった……


 私の部屋へ迎えに来なかったアンナマリアが、楽しそうにアイマールと話をしていたのだった。突然の裏切りに苛立った私は、アンナマリアの元へ歩み寄った。そして……


『パシッ!』

「痛っ……」


 言葉が出る前に私はアンナマリアの頬を平手打ちしていた。周りの目が私達へ集中する中、私はやっと言葉を発した。


「どういうつもりなの!」

「……」


 頬を叩かれた事で涙するアンナマリアを、アイマール庇うように胸元へ抱き寄せると、少し厳しい表情で私に向かって意見をした。


「何も言わずに突然の暴力は許せません、アンナマリアの何が悪かったというのですか!」

「私を迎えに来ないからでしょ!」

「アンナマリアは貴女の従者ではありませんよ?迎えに行くかは本人の自由です」

「くっ……それは」

「キンバリー様、私はもう迎えに行きません。クラスメイトのみんなと仲良く過ごします」

「アンナマリアっ!」


 アンナマリアの口から迎えに来ないと言われて、クラスメイト全員の前で恥をかかされ、さらに怒りがまして大声を発してしまった。


「大きな声が聞こえたけど、何事ですか?」


 悪いタイミングで、ジュリエッタ先生が教室へやって来た。アンナマリアが泣きながら頬を赤くして、アイマールに抱き寄せられてる状況を見れば、私が悪いと思われても仕方がない。


「キンバリー、説明をしてもらえる?」

「えっ、その……」

「アンナマリアが義務を果たさなかっただけで、お嬢様は何も悪くありません!」


 教室の外で待機してるはずのメイドが、教室の中へ入って私を庇ってくれた。


「メイドの入室は禁止されてるの、直ぐに教室から出るように」

「しかし」

「校則違反で帯同資格を剥奪しますよ?」

「うっ……」


 心配そうな表情をしながら教室の外へ出ていくと、先生はアンナマリアに事情を聞いた。


「アンナマリア、何があったか教えてくれる?」

「これまで、私はキンバリー様を迎えに行ってたのですが、今日は迎えに行かずに先に教室へ来ていたら、いきなり頬を叩かれました」

「キンバリー、今の内容に間違いはない?」

「ありませんが、これまで迎えに来てたんです。それなのに……」

「キンバリー、理不尽な暴力を認める訳にはいかないので、貴女は寮へ戻りなさい」

「は、はい……」


 先生の命令により、私は授業を受けずに寮へと戻る事になった。


 その日の授業が終わった後に、ミナ先生が部屋へやって来ると、1週間の謹慎処分とクラス委員長から委員への降格を言い渡された。


 私はこの日から、クラスの中で完全に孤立する事になったの。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る