第65話 認められない存在
◇◇◇キンバリー視点
後期最初の授業が終わって部屋へと戻る。
前期の武術対抗戦が終わってから、私の傍にいたキャメリアとクリスティがアイマールと親しくなった。少し優しくされた程度で、簡単に親しくなるなんて単純な娘だったのね。
「しかし、アイマールがフォースだったなんて、本当に存在の全てが目障りだわ。あなたもそう思うでしょ?」
「はい、お嬢様が最も尊敬されるべきなのに、アイマールが邪魔をするのは許せません」
専属メイドも私と同じ考えだった。
学力も武術も学院ではトップで、後期から本格的に始まる理魄の授業では、ダブルの私がクラスメイト全員から注目されると思ったのに、アイマールはフォースだった。何から何まで私の上を行くアイマールを、心のどこかで羨ましいと思ったけど、やはり認めたくない存在だと思ったの。
「そうは言っても、今の状況だと私は孤立してるわね。何とか巻き返さないと……」
「キャメリアとクリスティはご実家に報告をして、奥様からシェルトン家へ注意をしてもらいましょう。平民については取り込むのなら、適当なプレゼントを渡してしまえばよろしいかと」
「平民と仲良くするのは気乗りしないけど、アイマールとアリグリアを孤立させるには仕方ないわね。その方向で進めてくれる」
「かしこまりました」
(後期で巻き返して、私がクラスのリーダーだと証明してみせるわよ)
§アンナマリア視点§
キンバリーを部屋まで見送って後は、キャメリアとクリスティの部屋を訪れたけど、勉強会に参加してるようで戻っていなかった。
「はぁ……2人が羨ましい」
「お嬢様、そのような言葉を発しては……」
「だって、授業が終わってキンバリー様を見送ったら1人なんだよ?」
「それは……」
キンバリーはあまり有効的な性格ではなく、実家からプレゼントが届いて、自慢話をする時くらいしか部屋へ私達を招かなかった。これまではシェルトン家の2人と過ごしていたけど、2人が離れてしまって1人になったのだった。
直ぐに部屋へ戻らずに、図書館で勉強をした後に寮へ戻ろうとすると、アイマール達も戻るところで鉢合わせてしまった。
言葉を交わさずにその場を去ろうとすると、アイマールが笑顔を見せながら声をかけてきた。
「アンナマリアも勉強してたんだね。1人で勉強するのは大変でしょ?判らない所があったら聞いてね?勉強会に参加するのは厳しいなら、夕食後に部屋へ来てくれたら教えるよ」
普段から仲良くしてる訳でもないのに気軽に話しかけてきて、仲間の輪に加わってないのに部屋に招いてくれるなんて……その言葉を聞いただけで嬉しくて胸がいっぱいになった。
「あっ、どうしたの?何か失礼な事を言っちゃったのなら、ごめんなさいね」
私の目から涙が溢れた事を気にして歩み寄って、悪くもないのに謝りながらハンカチを手渡してくれた。
「ううん、ただ嬉しくて……部屋へおじゃまする時は事前に連絡するね」
「そんなの必要ないよ?来たい時に来てくれれば良いからね」
「ありがとう」
私はアイマール達と一緒に行動すると、心に決めた瞬間だった。
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