第64話 後期開始

 長期休暇が終わって後期が始まる。特に始業式などがある訳ではなく、いきなり午前と午後の通常授業が始まる。


 女学院に残って居た生徒は問題ないけど、帰省していた貴族令嬢達は、気持ちの切り替えが大変じゃないかと思ったので、ジュリエッタ先生が来るまでの間に、その事をグリアに聞いてみる。


「帰省から戻って直ぐに通常授業は辛くない?」

「私は実家よりも女学院の方が楽かな?私だけが王立学園に通えなかったから、どうしても浮いた存在になるんだもん。こうしてマールと一緒にいる方が落ち着くわ」

「そうか、それなら次の長期休暇まで楽しもうね」

「えぇ、そのつもりよ」


 グリアと話をしていると、ジュリエッタ先生が教室に入って来たので、口を閉じる。


「おはよう、今日から後期が始まるわね。後期からは理魄の授業が本格的に始まるのと、武術でも理魄を組み合わせたものになるからね。前期と比べると授業のレベルが上がるから覚悟してね」

「「はい」」

「今日は午前は理魄と理力の説明で、午後は身体が鈍ってるかも知れないから、徹底的に身体を動かす基礎トレーニングだからね」


 先生が基礎トレーニングと言うと、教室中に『え〜!』の声が鳴り響いた。初日から汗だくになる容赦ない授業はみんなも辛いようだった。


 午前の授業は、未だに謎が多い理魄と理力の説明で、理力は個人差があるけど全ての人が保有してるけど、理魄は全人口の5%程しか保有してない。さらにダブル、トリプル、フォースと増えるに連れてその人口は減っていく。人類最高は女学院の学院長であるアリスター妃爵で、7属性を持つセブンスだと説明を受けた。


 すると、キンバリー様が手を上げてから、先生に質問をしたのだった。


「先生、私は水と土のダブルです。この場合はどちらかを伸ばす方が良いのですか?」


 ダブルと言った後に、『おぉ』と言うクラスメイトの反応にご満悦な表情をするキンバリー様、その質問に先生が答える。


「どちらも伸ばさないと、せっかくのダブルが勿体ないね。私もダブルだから2つを同じように伸ばす事に苦労したから、キンバリーも大変だと思うけど頑張るんだよ」

「はい、判りました」


 キンバリー様の質問が終わると、先生は生徒全員に向かって声をかける。


「他にも複数の理魄を持つ人が居たら、私やアイマールに質問をすると良いわよ」


 先生の言葉を聞いたキンバリー様は、困惑の表情をしながら少し語気を強めて質問する。私の名前が出た事が不満だったみたい。私も自分の名前が出た事には不満があったけどね。


「それはどういう意味ですか?」

「アイマールはこの女学院で唯一のフォースなのと、4属性が自由に扱えるからだよ」


 私の隣りに居たグリアもフォースと聞いて、流石に驚きの表情で私の方を見ていた。というかクラスメイト全員が見ていたのだった……


(先生……この場で言わなくても……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る