閑話 バーラント家での休暇

 前期が終了してバーラント家へと帰省した。


 バーラント家は伯爵家なので、夏になると貴族の務めである夜会に家族で出席するからだ。私は両親や兄姉達のように、王立学園へ通えなかった不出来な娘なので、夜会へ出ても肩身が狭い……


「アリグリア、ただいま戻りました」


 屋敷に戻って直ぐにお母様へ挨拶をする。私には興味のないお母様が『チラッ』とこちらを向くと、直ぐに視線を戻して本を読みながら返事をした。


「学力と武術の対抗戦ではクラスが優勝。でも学力のシルバーリングのみなのね。バーラント伯爵家なのだから、ゴールドリングとダイヤのピアスを持ち帰って欲しかったわ」

「はい……力及ばずに申し訳ありません」

「まぁ、そんな事はどうでもいいわ。手紙でも伝えたけど後期に行われる、王立学園への編入試験で必ず合格するように。判れば下がりなさい」

「は、はい……失礼します」


 この屋敷に居ると息が苦しい……早く女学院へ戻ってマールに会いたい。そう思いながら部屋へ戻ろうとすると、ハワード侯爵家との婚約が決まってる長女ラフィア姉様とすれ違う。


「グリア、お母様から編入試験を受けると聞いたわよ。頑張れと言いたいけど編入しない方が良いんじゃないかしら?」

「それは、どういう事でしょうか?」

「あら、私の言った意味が判らないのね。仮に編入できても、王立学園のレベルに付いていけずに卒業出来ないでしょ?」

「そ、それは……」


 姉様の言う事に言い返せずに口籠ると、ため息をつきながら話を続けてくる。


「はぁ、お母様は一応は王立学園を卒業してるけど、バーラント家に相応しい成績ではなかったのよ?バーラント家が陞爵する為の道具だから、その事が判らないのよ。編入しても、恥をかくだけだから女学院で上位のまま卒業しなさい」


 姉様は王立学園を十傑で卒業した才女だ。私の心配よりも自身の妹が、王立学園で落ちこぼれて噂になる事が嫌なのだろう。見返したい気持ちもあるけど、そんな事よりも私はマールと一緒に過ごしたいと思ってるので、姉様に頼み事をする。


「ラフィア姉様、言う通りに女学院に残るので、編入試験で落ちた時にお母様を宥めてもらえませんか?」

「あら?少しは物分りが良くなったのね。お父様も私と同じ考えだから問題ないわ。後は女学院で今の成績だけは維持する事を忘れないでね」

「はい、判りました」

「じゃあ、私はお父様に話をしてくるわね」


 姉様との話が終わった後は、小さく『ヨシ』と頷いてから部屋へと戻ったのだった。


(これで安心して女学院へ残れるわ!)

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