第61話 応用第2段階

 私は理力操作の応用第1段階の訓練を始める。先ずは基礎訓練の時と同じように水玉をだす。その状態を維持しながら、水玉から四角い箱へ形状を変えてみる。


(うん、こんな感じで良いのかな?)


 形状を変えてからは、質量は維持して次々と形状を変えていくんだけど、これがかなり難しい。


 基礎訓練の時は水玉を作れば、そのまま形状を維持するだけなので、理力放出に集中するだけで良かったけど、応用第1段階では形状変化のイメージと維持、次の形状を考えながら維持というように、2つの事を同時にする必要があるから。


 それでも壊す事なく次々と形状を変えていると、師匠から声をかけられる。2つの事を同時にするだけでも大変なのに、話を聞くとなると流石に集中が途切れて、具現化していた物が壊れてしまった……


「アイマール」

「あっ……すみません、話を聞きながら第1段階は、今の私ではまだ無理です」

「いいや、声をかけたのは修行の時間が終わったからだよ。3時間の間ずっと第1段階を続けるなんて、どんな集中力をしてるんだい」


 私の中では30分くらいの感じだったので、3時間と聞いて驚いた。この第1段階の訓練では、1つの形状変化に想像以上の時間を費やしてるんだと思った。次からは形状変化をもっとスムーズにしようと思った。


「そうだったんですね。集中し過ぎて時間の経過が早いですね」

「私なんて1時間が限界なのに、あははっ……」


 私は、ミナ先生より長い時間を維持をしていたようで、言葉の後の笑い声に哀愁が漂っていたけど、師匠がその事について言及した。


「アイマールは〚創造変換トランスフォーム〛で理魄を作ったほどの創造力があるから、形状変化をする時に無駄な理力を使わないんだろうね。明日からは第2段階をしてみるよ」

「はい、よろしくお願いします」

「私は1年掛かったのに……」


 そして、翌日は予定通り第2段階の訓練を開始するけど、動かすのはかなり難しく、手元から離れると『パンッ』と弾けるように壊れてしまう。


「あっ……また壊れた。形状を維持したまま手元を離れても、壊れないようにするには……」

「第2段階はその答えを見つけるのが修行で、発想力を鍛えるのが目的だからね」

「はい、思いついた事をとにかく試し続けます」


 最初は、理力の濃度を濃くしても手元を離れれば弾けた。次は弾けないように水ではなく氷にしてみると、壊れる事なく動かせたけど、これは氷限定になるのでボツになる。ただ、この失敗のおかげで良い方法が閃いたので試してみる。


 先ずはいつも通り水玉を出してから、水玉の周りを弾けないようにコーティングをする。


(よし、出来た)


 後は弾けない事を祈りながら動かしてみると、思った通りに動かす事が出来たのだった。


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