第59話 先生それともお母様?

 実家から解放されて喜びの涙を流して落ち着くと、ミナ先生が真面目な顔で話しかけてきた。


「改めて挨拶をするわね。アイマール、今日から貴女の継母となるミーナリア.レジストリーです。突然の事で戸惑うかも知れないけど、母として娘の幸せの為にサポートするからよろしくね」


 レジストリー子爵家へ転籍と言われた時に、うすうす判っていたけど、女学院で教師と生徒の関係でありながら、母娘の関係になる事に戸惑ってしまう。


「あの、私はミナ先生とお母様のどちらでお呼びすれば良いのでしょうか?」

「それは、学院内では先生と呼ぶ事になるから、呼び分けるのが面倒なら先生で良いわよ」

「判りました。ミーナリアお母様、今日から娘としてよろしくお願いします」

「あっ、うん、よろしくね」


 わざと先生ではなくお母様と呼ぶと、ミナ先生は少し照れくさそうに返事をしていた。


 私は転籍した事でレジストリー男爵家から解放されたけど、専属メイドとして仕えてくれてるアリシャの事が気になったので、その事をミナ先生に聞いてみた。


「あの……アリシャはどうなるのでしょうか?私が生まれた時からずっと、アリシャが世話をしてくれたから今の私があります。ずっと私の傍に居て欲しいと思ってます」

「お嬢様ありがとうございます」


 私の言葉を聞いたアリシャは嬉しそうな顔をしながら頭を下げた。ミナ先生はそんな私達を見ながら返事をする。


「引き続きアリシャは専属メイドとして仕えてもらうよ。アリエル様はレジストリー男爵家ではなく、ご自身が雇用主としてアリシャと契約していたの。そして、アリエル様が個人で所有されていた全ての資産はアイマールが相続したから、アリシャの雇い主はアイマールなんだよ」


 ミナ先生から予想外の事実を聞いて喜んだ。私が転籍をしても、アリシャが引き続き専属メイドとして仕えてくれる。これ以上嬉しい事はなかったので、再びアリシャに抱き着き喜びを伝えた。


「これからもずっと、ずっと私の傍に居てね。アリシャが居ない人生は考えられないもん!」

「お嬢様……私はお傍を離れずに貴女をお守りすると、お嬢様と亡きアリエル様に誓います」


 私の言葉を聞いたアリシャは、私と亡き母に私を守ると誓ってから強く抱きしめてくれた。そんな私達を微笑ましく見つめながら、師匠がお母様の事で私に話しかけてきた。


「アイマール、アリエルの全てを相続したと言ったよね。だからアリエルが【稀の戦姫】と呼ばれていた頃の装備品も、アイマールが相続した事になるから渡しておくね」


 そう言ってから、〚次元収納ストレージ〛からお母様が使っていた装備一式を出して、全てを私は渡してくれたのだった。


「あの娘は扇と刀を使っていてね、防具も合わせてどれも伝説級の逸品だから大事にするんだよ」

「あ、ありがとうございます」


 私は受け取った装備一式を眺めた後に〚次元収納ストレージ〛へ収納した。


「さぁ、用事は全て済んだよ。明日も修行をするから部屋へ戻ってゆっくりと休むんだよ」

「はい、ありがとうございました。失礼します」


 私は部屋を出た後は、アリシャと寄り添いながら部屋へと戻って色々と話をしてから眠りについたのだった。


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