第58話 実家からの解放
修行と武術の練習が終わって、汗をなごした後に夕食を取っていると、ドアをノックする音が聞こえたので、アリシャが対応をする。
『コンコン』
「このような時間にどなた様でしょうか?」
「あっ、ミナだよ。至急の用があるから学院長室へ来てほしいんだけど、マールは大丈夫かな?」
ミナ先生から学院長室へ来て欲しいとの事だった。至急と言われたので食事の途中だったけど、急いで向かう事にした。
「判りました。直ぐに着替えて向かいます」
「うん、よろしくね。あっ、アリシャも同行してくれるかな?じゃあ、待ってるからね」
ミナ先生は用を伝えた後は、直ぐに学院長室へ向かったようなので、私も身支度を整えて向かう事にした。
「この時間なら上着を羽織るだけでいいよね?でも、こんな時間に何の用事なんだろうね?」
「そうですね。ご実家の事でしょうか?」
「ここで話してても仕方ないね。待たせるのは失礼だから早く行こうか」
「はい」
私とアリシャは急いで学院長室へ向かう。既に師匠とミナ先生はソファーに並んで座って居たので、2人へ挨拶をする。
「遅くなってすみません」
「いいえ、こんな時間に呼んで悪かったね。ミナを遣いにやってて今戻ったところなんだよ。早く知らせておいた方が良いかと思ってね」
師匠はそう言ってからミナ先生の方に顔を向けると、頷いた後に笑顔で私とアリシャに向かって口を開いた。
「本日よりアイマールは、レジストリー男爵家からレジストリー子爵家へと転籍する事とする。これは、アリスター王国妃爵アナスタシア.アリスター様の権限によって決定されました。そういう事で、今日からは私があなたの継母になるからよろしくね!」
私はミナ先生が言った内容を理解できずに、その場で固まって何も言えなかった。隣のアリシャも驚きのあまり同じように何も言えなかった……
「私の権限でアイマールを転籍させて、レジストリー男爵家とは縁を切らせてもらったよ。もう、親に酷い言はされないから安心するんだよ」
師匠が改めて実家と縁を切ったと伝えられると、背負っていた重荷が1つ消えて、身体が軽くなったように感じると同時に、目からは涙が溢れ出した……
(私は家族から解放されたのね……もうあの場所へ帰らなくても良いんだね……)
「お嬢様、良かったですね……もう、あの家に縛られる事はなくなりましたよ」
隣のアリシャも涙を流しながら、私の肩に手を添えてくれた瞬間、アリシャに抱き着いて声をあげながら泣いたのだった……
§イーブル子爵視点§
レジストリー男爵から手紙が来て、内容を確認して呆然となる。
(転籍だと!しかも妃爵命令とはどういう事だ)
奴の借金を帳消しする代わりに、アイマールの全てを奪おうとしてた計画が破綻したのか?
あの快感を再び味わえると思っていたのに、この衝動は抑える事など出来ない!私が直接手を下せないなら、何か手を考えないと……必ずお前を絶望させてやるからな!
「おい、ルクレツィアを今直ぐにあの部屋へ呼ぶんだ!」
「かしこまりました」
「クズ娘でも衝動を抑える道具になるだろう」
その後のイーブルは、秘密の部屋へルクレツィアを呼んで、実の娘に対して非常とも思える行為に及んだのだった。
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