第52話 ミナ先生の師匠
武術対抗戦が終わって普段通りの日常へと戻って、放課後は変わらず勉強会や武術訓練を行っている。変わった事といえば、キャメリアとクリスティが私達の輪の中へ加わってくれた。2人は武術対抗戦の後にキンバリー様とアンナマリアも誘ってくれたけど、答えはNOだったらしい。
「キンバリー様に関しては、貴族のプライドが邪魔してるんだよね。アンナマリアはライトリー家がシュスター領内にあるから、家の事を考えると離れる事は出来ないみたい」
「せめて、学院内くらいは自由に出来ると良いのにね……」
キャメリアからの説明では、アンナマリアは自分の意志で、キンバリー様の元を離れる事は出来ないんだね。
2人の事は現状ではどうする事も出来ないので、今は私達の出来る事をした。
そんな毎日を過ごして、前期の終わりが近づいてきたある日、アリシャがミナ先生からの伝言を伝えてくれた。
「お嬢様、ミナ様からの伝言で教諭室へ来るようにとの事です。私もお供するので直ぐに参りましょう」
「うん、ミナ先生の師匠を紹介してもらえるのかな?そうだったら緊張するな……」
「大丈夫ですよ。ミナ様ほどの方を育てられる師匠ですから、素晴らしいお方に違いありません」
「うん、そうだよね。待たせるのは失礼だから少し急ごうか」
私達は教員室ではなく、ミナ先生の教諭室へと向かってドアをノックする。
『コンコン』
「アリシャです。お嬢様を連れて参りました」
「入って良いよ」
アリシャは大丈夫だと言ったけど、実際に部屋へ入ろうとすると緊張した。
(どんな方が師匠なんだろう……)
部屋へ入ると、ミナ先生は自分の机に座らずに立っていて、師匠と思われる方が座りながら窓の外を眺めていた。そして、ゆっくりと椅子を回転させながら私達の方を向かれた。
(えっ……この方って、学院長?!)
「急に呼び出してごめんなさいね。前にも言っていたけど私の師匠を紹介するね。この女学院の学院長を務めているアナスタシア.アリスター妃爵だよ。流石に顔だけは知ってるよね?」
ミナ先生が紹介したのはやはり学院長だった、まさかの学院長の紹介に私は驚き過ぎて、思わず挨拶をするのを忘れてしまった……
「アイマール.レジストリーと申します。アリスター王国全ての女性が憧れる、アリスター妃爵様にお会いできて、大変光栄に思います」
少しタイミングが遅れて挨拶をすると、とても優しい笑顔をしながら、椅子から立ち上がられて手招きをされたので、妃爵様の元へ歩み寄る。
「遠目で見ても似てると思ったけど、目の前で見るとアリエルに瓜二つだね」
妃爵様は、実母アリエルの名前を口にした後は、優しく包み込むように抱きしめた。私は緊張して一瞬体に力が入ったけど、妃爵様から伝わる優しさに、記憶にない母を感じて思わず口が動いて涙が溢れた。
「お母様……」
「判るのかい?私が覚えているアリエルを感じ取ったんだね。感性もアリエル譲りなのかもね」
「お母様、あっ、妃爵様はお母様の事をご存知なんですか?」
「あぁ、良く知ってるよ。その事を含めてゆっくりと話そうかね?」
「はい、お話を聞きたいです」
私の知らない母の事を聞けると思い、胸の鼓動が早くなり涙は止まって、満面の笑顔に変わっていた。
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