閑話 納得だね

◇◇◇学院長 アナスタシア視点

 武術対抗戦で行われた全ての試合を見届けた後に、学院長室へと戻って改めて資料に目を通す。


「ふふっ、資料を見た時は驚いたけど、アリエルの娘ならあの天才っぷりにも納得だね。そうかい、稀代の天才【稀の戦姫】はあの娘を残して逝ったのかい……」


 笑みを浮かべながらアイマールの才能に納得した。そして目を閉じて、かつての教え子だった【稀の戦姫】ことアリエルが、この世を去った事を知り涙を流した。


「アリエル……あんたに救われた命だ。その娘が私の元に来るのは運命だったのかい?アナスタシア.アリスターの名にかけて、アイマールをあんたに負けない立派な淑女に育てるよ」


 その後は、アリエルと過ごした懐かしい記憶を思い出しながら、グラスに注いだウイスキーを飲んでいると、ドアをノックする音がなる。


『コンコン』


「誰だい?」

「ミナです」

「開いてるよ」


 ドアが開くとミナの後にもう1人控えていた。


「1人じゃなかったのかい?」

「えぇ、彼女はアイマールの専属メイドのアリシャです。師匠に私達から報告したい事がありまして」

「アイマールの母が、あのアリエル.レイバックだって事かい?」


 その名を聞いてミナは驚く、アリシャもレイバックの姓が出た事に驚いた。


「あの……アリエル様がアイマールの母?私の姉弟子の【稀の戦姫】が?」

「知らなかったのかい?知ってるから弟子に推したんだと思ってたよ」

「いえ、単純に才能が凄かったから……」


 アイマールの母親の報告だと思ってたので、何の報告なのか判らなくなり、ミナと連れのメイドに報告の内容を確認する。


「それで、何の報告をしに来たんだい?」


 すると、メイドがミナの前に出てきた。


「私から報告させて頂きます……」


 メイドから話を聞き終わる頃には、気分が悪くなった……親が我が子にする事なのか?


 思わず感情が昂ぶってしまい、私から溢れた怒りオーラを感じて身を竦めてしまった。


「し、師匠?」

「悪いね……子を持った経験があれば、今の話を聞いて怒りが込み上げない者は居ないよ。あの娘は私が預かるから、誰にも手出しはさせないから安心していいよ。学院外からアイマールへ接触する事があれば、全て私へ報告するように。それは家族からでも例外はないからね」

「かしこまりました。お嬢様の事をよろしくお願いします」


 深々と頭を下げるメイドに違和感を感じたので、話が終わったら残ってもらう事にする。


「話しはこれで終わりだね。メイドは少し残ってくれるかい?アイマールの事で聞いておきたい事があるからね」

「かしこまりました」

「では、私は先に失礼しますね」


 ミナが部屋を出た後は、メイドに感じた違和感を伝えると、私に気付かれた事に驚いていた。その事については、本人が秘密のままにして欲しいと言うので私の胸に収める事にした。


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