第38話 アイマールの過去

 私は身を震わせながらアリシャを待った……


(アリシャ、早く来て……1人じゃ耐えれないよ、私を優しく抱きしめて……)


「お嬢様!」

「アリシャ!」


 直ぐに私の元へ駆け寄って、優しく抱きしめられても震えが止まらない……


「大丈夫です、私が傍に居ますからね。部屋へ戻って休みましょう」

「その状態で部屋まで連れて行くのは大変だりうから、私も手を貸すよ」


 ミナ先生も遅れてやって来て、アリシャに手を貸してくれると言ってくれた。


「ありがとうございます」

「気にしないで、早く休ませてあげないとね」


 私は部屋へと運ばれて眠りに着いた……


§アリシャ視点§


 私が集会所の外でお嬢様を待っていると、レジストリー子爵様から声を掛けられた。


「メイドさん、アイマールの具合が悪いようなの。一緒に来てくれるかな?」


 言葉を聞き、私はお嬢様の元へ駆け寄ると、顔は青白くなり身体は震えていた……


(これはトラウマで苦しむ時の様子だ……女学院では異性は居ないはずなのにどうして?)


 震えるお嬢様を抱きしめて、落ち着かせようとするも震えは止まらない。部屋へ運んで休ませようとすると、ミナ様が手を貸してくれたので、素早く部屋へと運びベッドで休ませる事ができた。


「ミナ様、ありがとうございました」

「気にしないでね。それより、彼女の状態は病の部類ではないね。私の予想では精神的ストレスだと思うんだけど、違うかな?」


 流石は子爵の爵位を持つ一流の教師だ。一瞬で状況を把握してるのか、だけど全てを話す事は出来ない……


 そう思ってる事まで見抜かれたのか、ミナ様は誓約書を私に渡してきた。命令すれば答えさせる事も可能な立場なのに、強制でなく尊重する振る舞いに感謝して、誓約内容を記入して誓約書をミナ様へ渡す。


「内容を確認したよ。誓約成立だね」

「はい、ではお話します」


 私はお嬢様に起こった事で、知っている事の全てをミナ様へ伝えた。話し終えると、ミナ様の表情から激しい怒りを感じた。


「本当に親なのか?それにその男は常軌を逸している……私も微力ながら彼女を護らせてもらうよ。師匠も武術対抗戦の結果次第では、弟子に迎えても良いと言っていたからね」

「ありがとうございます。ところで、ミナ様の師匠とは?」

「この女学院の学院長をしてる【アナスタシア.アリスター】妃爵様だよ」


 その名前を聞いて驚愕した……王国最高戦力にして先々代国王の元妃だった方、妃爵という特別な爵位を与えられた【七星セブンスターアナスタシア】様だったからだ……


「そ、そんなお方がお嬢様を弟子に?」

「まぁ、武術対抗戦の結果次第だからね?私はこれで失礼するけど、何か判ったら教えてね」

「かしこまりました」


 思いがけない味方を得て、ミナ様なら家からの圧力に対抗してくれるのではと期待してしまった。後は何があったのかを聞く為に、お嬢様が目覚めるのを待つのだった。

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