第30話 学力対抗戦

【第30話 学力対抗戦】

 模擬試験が終わって、学力対抗戦へ出場する選抜メンバーが決まってからも、私達は勉強会を続けていた。


 平民の生徒が選抜メンバーになった事の理由が、クラスで実施された模擬試験の成績順だと知られて、他のクラスの貴族令嬢のメイド達が、放課後に行われてる勉強会の様子を見に来るようになった。


(このAクラスの様子を見て、他のクラスでも身分に関係なく勉強会をしてくれると良いな)


 そして、時間が経過して学力対抗戦を迎える。


 各クラスの選抜メンバーが試験会場に集まってから、学力対抗戦の開始を待つ。私が試験会場の周りを見渡すと、他のクラスの生徒達がAクラスの方を見てる事に気付いた。当然、目が合う訳であった瞬間に『プイッ』と相手に目を逸らされてしまった。


(私は貴族令嬢側から見れば裏切り者で、敵視されるのは仕方ないのかな……)


『スーッ』


 会場の扉が開いて、ミナ先生を先頭に各クラスの担任が試験会場に入ってくる。


「皆さん、おはようございます」

「「おはようございます」」

「これから学力対抗戦を始めます。試験科目は数学、歴史、理魄学の3科目。それぞれ100点の試験で各クラスの合計点で順位を決めるわよ。先ずは数学から始めるので、担任は試験問題を配布してください」


 ミナ先生より、学力対抗戦の説明があった後に、数学の問題が配布されたところで、試験開始の合図が出された。


「それでは、試験を開始します。はじめ!」


 試験が始まると、『カリカリ』とペンで答案用紙に記入する音が響き渡るなか、私達Aクラスの生徒達は直ぐに問題を見ずに、大きく深呼吸してから試験に取り掛かる。これは開始直後は緊張するので、リラックスする為にアドバイスをしていたからなの。


 学力対抗戦は団体戦だけど、互いを助け合う事が出来ないので個人戦と同じだ。始まればクラスの為に1点でも高い点数を目指さすの。私はクラスメイトを信じて出来る限り頑張った。


 1科目、2科目、3科目と試験が行われて、全ての試験が午前中に終わったところで、女学院へ入学してから初めての選抜対抗戦が終了した。


「はい、そこまで!担任は答案用紙を回収して、私の下へ届けてください。生徒達は回収が済んだら退出して午後の授業に備えなさい」

「「はい!」」


 答案用紙を回収した後は、午後の授業に備えて昼食を取りに寮へ戻る。私はグリアから昼食に誘われていたので、そのままグリアの部屋へと向かうが、途中までクラスメイトと一緒に移動する。


「お疲れ様、試験はどうだった?」

「私はいつも通りかな?」

「「満点って事だね〜」」


 グリアからの一言で、寮の手前まで事件の話をしたけど、みんな手応えは良かったようで、終始和やかなムードでの会話となった。

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