第26話 母のような存在

 キンバリー様との話し合いは、全く噛み合う事はなく終わった。


 それが貴族のプライドと言ってしまえばそうなのかも知れない……Aクラスの貴族令嬢だけで話した結果なので、全てを受け入れた私は完全に吹っ切る事ができた。


「残念だけど、もうあの4人は放って置くしかないわね」

「うん、私達のする事は変わらないよ。グリア、明日からもよろしくね」

「任せてね」


 アリグリア様と別れて部屋へ戻ると、アリシャがお茶を用意してくれたので休憩をする。


「シュスター嬢の考えは、やはり変わらなかったのですね」

「えっ、なにも言ってないのに知ってたの?」


 アリシャが、話し合いが上手くいかなかった事を知ってる事に驚くと、『フッ』と少し柔らかい表情をしながら答えた。


「お嬢様が生まれた時からお世話をしているのです。その程度なら雰囲気を見れば判ります」

「ははっ、アリシャは家族よりも私の事に詳しいもんね。専属メイドというよりは、母のような存在だね」

「あっ、そう思って頂けるのは、仕える者としては最高の褒め言葉です」


 アリシャに母のようだと伝えると、表情が一瞬だけ驚いた表情になったけど、直ぐにいつもの優しい表情に戻った。なんでも理解してくれる存在がいる事が本当にありがたいと思った。


「まぁ、完全に吹っ切れたから、グリアが言ったんだけど、あの4人は放って置いて、今のクラスメイトと頑張るだけだよ」

「それがよろしいですね。さぁ、私は夕食の用意を致します」


 その後は、いつも通りに過ごして1日を終えた。


§アリシャ視点§


 お嬢様が『母のような存在だね』と言ってくれた……最高の褒め言葉に涙が出そうになった。


 私はお嬢様の母であるアリエル様に、孤児であった私の身元を引受けて頂き救われた。使用人だった私に、文字の読み書きから一般教養まで教えてくれた。『身を守れるように』と武術の稽古までつけてくれたのだ。


 結婚が決められた時は『自由に生きても良いのよ』と言われたが、私はアリエル様への忠誠を誓い側に置いてもらった。


「じゃあ、私に子供が出来た時はに全てを任せるわね」


 あの時、アリエル様にに言われた言葉が今の私の全てなのだ。私は専属メイドとなるべく努力をして、生まれて来られるお子様の専属メイドのアリシャとなった。


 アリエル様はお嬢様の出産で不幸にも命を落とされた……


『子供が出来た時はに全てを任せるわね』


 その言葉を私は胸に刻んで生きてきた。今日のお嬢様の言葉を聞いて、アリエル様への恩返しが少しだけ出来たと思えたのだった……


(アイマール様、私の全てを貴女へ捧げます)


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