第23話 天才と凡人

 私とキンバリー様が向かい合う中、ミナ先生の開始の合図で模擬戦闘が開始する。


「理魄で決めるつもりなのね。でも発動する隙を与えなければ問題ないのよ!」


 素手の私が理魄による攻撃で勝負すると思ったようで、一気に間合いを詰めてきた。


『シュッ、シュン』


 流石は伯爵令嬢で入学前からしっかりと鍛えている。素早い動きで近寄って双剣をクロスさせて斬り掛かってきた。


 私は〚創造変換トランスフォーム〛で右手を盾に左手を短槍に変換して、盾で剣撃を受け止めから短槍でつま先を突いた。


「えっ、なにっ!キャッ!」


 自分の間合いで攻撃を仕掛けた瞬間に、盾が現れた事に驚いて力の抜けた剣撃は簡単に受け止められ、更につま先を突かれた事で、私から離れる事が出来なかった。

 双剣の基本は圧倒的な手数でのヒット&アウェイだ。それを封じられて焦るキンバリー様に、盾で腹部へ押し当て動作で寸止めする。


「そこまでね。勝者アイマール!」

「なっ、違うわ!私は負けを認めてないわ。まだ動けるのですから続行よ!」


 寸止めの攻撃をしたのだから、無傷で動けるのは当たり前の事だ。恐らくその事は判ってるけど、何も出来ずに負けた事を認めたくないんだ。


「アイマールが寸止めしなければ怪我してたわ。私が勝者の名乗りをあげた時点で終了、模擬戦闘のルールに従ってもらうわよ」

「だって、いきなり武具を出すなんて卑怯よ!驚いただけで判ってれば対処出来ましたわ。もう1戦させてください!」


 圧倒されたままで終わりたくないので、難癖を付けて再戦を希望するキンバリー様、流石のミナ先生も大きくため息をついてから私の方を向く、私は小さく頷いて再戦を認めた。


「仕方ないわね、アイマールが認めてくれたから再戦をするわよ」

「当然ですわ。貴女は卑怯な手を使わないで頂きたいわ」


 私の〚創造変換トランスフォーム〛を卑怯だと言うので、ミナ先生にその事を確認する。


「これは私の才覚なので問題ないのでは?」

「問題ないね。キンバリーの講義は却下ね。それとも自分に不利になるから、理魄の使用を認めない武具のみの模擬戦闘にする?」

「っ、か、構いませんわ」


 自分から理魄の使用を言い出したので、それは流石にプライドが許さなかったようだ。


「では、再戦を始めるわよ」

「「はい」」


 今回は最初から盾と短槍を持って構えると、ミナ先生の開始の合図で再戦が始まる。


 流石に素手ではないので、キンバリー様も簡単に間合いを詰めてこない、理魄を使うつもりで詠唱を始めた。


「全てを焼き払う火よ、火球となりて相手を滅せよ……」


 詠唱に集中し過ぎて隙が出来たので、私は〚創造変換トランスフォーム〛で風を生み出した風で詠唱を止める。


「〚エアロ〛」

『ビュン!』

「キャッ」


 顔に風が当たって驚いた事で詠唱が止まる。私は一気に距離を詰めて、盾を体に押し付けて短槍は頭部へ攻撃出来る状態で動作を止めた。


「そこまで、勝者アイマール」


(ここまで圧倒するなんて、天才と凡人ではスタートラインからこれだけ差があるのね……)


 連続で完敗したキンバリー様は、その場に両膝から崩れ落ちたの。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る