第12話 初めての友

 アリグリア様が私の部屋を訪れて来る事は、予想していなかったので驚いたが、私はアリシャへ目で指示を送って、アリグリア様を部屋へ案内させて無難な言葉をかける。


「アリグリア様、このような狭い部屋で申し訳ありません」

「あなたが勝手に選抜委員で話を纏めるから、クラス委員長になり損なったじゃないの」

「お、お嬢様!」


 口では皮肉を言ってるけど、表情を見れば視線を下に向けて照れ臭そうだった。本当に人付き合いが下手な方なんだと改めて思った。


「キンバリー様達の結束が固いと思いましたので、私の勝手でアリグリア様を巻き込んでしまった事をお詫び致します」


 私が謝罪をすると意外そうな顔をした後に、『フゥ』と一息ついてから冷静な口調で喋り始めた。


「あなたは『バーラント家の出来損ない』なんて言われている私と行動をしても、メリットはないんじゃないの?」

「あの場でも言いましたが、同じ女学院に通っている時点で同等なのと、私とアリグリア様は似た境遇で育ったのかも知れませんね」

「私とあなたが似た境遇?」


 アリグリア様が私の言葉を聞いた後に顔を曇らせると、アリシャがお茶を用意して戻ってきたので頷くと、お茶とお菓子を置いた後に私の隣に座ったので、アリグリア様も目線で合図をしてメイドを座らせた。


「はい、私の家レジストリー家は領地を持たない男爵家の為に、武勲を上げる事が出来ずに借金が膨れ上がりました。そして借金の肩代わり私はある男に……オェッ……」

「お嬢様!無理です身体が拒絶してます!」


 アリシャは私の背中を擦りながら話を止めるように促したけど、私は蒼白になった顔のまま話を続ける。


「はぁっ、はぁっ、私はその男から酷い虐待を受けました。可愛い弟さえも拒絶してしまう程のトラウマを抱えています……私は前妻の娘なので義母からは嫌われていましたが、まさか父にまで見離されてるとは思ってませんでした……」


 その後も、理魄を壊された事以外は話すと、アリグリアは硬い表情で喋りかけた。


「何故?そんな話を私に教えたの?」

「それは、アリグリア様が私と似た雰囲気をされていたので、孤独に感じる必要はないと伝えたかったんです」

「私はあなたほどの仕打ちを受けて、どうして人に優しく出来るの?」

「優しいかは判りませんが、せっかく知り合ったので仲良くなれればと思いました」

「私と仲良く……」


 アリグリア様は言葉を詰まらせると涙が溢れ出した。そしてそこからは素直な気持ちを聞かせてくれたのだった。人から注目を浴びる為に意固地になっていた事などを教えてれた。


 そして、最後には少しサプライズが起こった。


「その、あなたさえ良ければなんだけど、私の友になって欲しいのよ」

「私で良ければよろしくお願いします」

「アイマール、友として選抜委員としても仲良くしてね」


 何かトゲのような物が取れたのか、スッキリとした表情で手を差し伸べてきたので、私はその手を取って握手をした。


 私にとって初めての友が出来た瞬間だった。


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