第11話 彼女なら

 私はバーラント家の中では浮いた存在だ。

 

 幼少の頃より優秀な兄達と違って、全てにおいて劣っていた。当然だけど周りから期待される事もなく、誰も相手をしてくれなかった。


 私は父母に構って欲しくて、イタズラやメイドへ嫌がらせ等をしたけど、冷たい目を向けられるだけで、全く相手にされなかった。兄や姉たちも腫れ物を見るように見るだけだった。


(どうして、誰も相手をしてくれないの…)


 バーラント家での生活は何も楽しい事はなく、毎日が孤独で仕方なかった。そんな私の唯一理解者は専属メイドのダブネだけだったの。


 他の者達は、私が何をしても無視をするのに、ダブネだけは良い事をすれば褒めて、悪い事をすれば怒ってくれたの。


 私が9歳を迎えると、兄達の通う王立学園を受験したが不合格だった。私が部屋で落ち込んで居るとお母様が部屋へやってきたの。私を慰めてくれるのかと少し期待した。


「アリグリア、お前はバーラント伯爵家の汚点よ。出来損ないだと判っていれば、アナタを産まなかったのに。外へ出てバーラントの名を使わないようになさい!」

「お母様、はい…判りました」


 落ち込む私をお母様は慰めるどころか、罵倒して家名を名乗る事を禁じた。『ポロポロ』と涙が溢れ出す私に追い打ちをかける。


「お前のような出来損ないが何を泣いてるの!泣きたいのは私の方よ!次の夜会で恥をかくのは私なのよ」


 そんな時もダブネは私を庇ってくれた。


「奥様、お嬢様は頑張られました。それなのにそのお言葉は酷すぎます」

「黙りなさい!もし女学院に落ちたらお前はクビよ!そしてアリグリアは修道院へ送るから覚えておきなさい!」

「あっ、奥様、待ってください!」


 お母様は何も言わずに部屋を後にした。


「ダブネ、ごめんね。私のせいでクビに」

「お嬢様、私の事よりもご自身の心配を為さってください!女学院へ合格しないと修道院へ送られてしまうんですよ」

「私はバーラント家に居ない方がいいもの」


 家に居場所がないから、私は修道院へ入っても良いと思ったけど、ダブネは女学院への入学を勧めてくれた。


「女学院は全寮制です。最大で5年間は家から出られますから、その間に身の振り方を考える事が出来ますから頑張りましょう。修道院へ入ればそこで人生が終わってしまいます!」

「頑張ってみるよ」


 この日から必死に努力して、なんとか女学院に合格して無事に入学をしたのだけど、不器用な私は人付き合いが苦手なのと、お母様が夜会で出来損ないと言って回ったせいで、かなり浮いた存在となってしまい、家に居る時と同じように孤独な状況になってしまった…


 そんな浮いた存在だった私なのに、アイマールは一緒に委員をしてくれると言った。キンバリーが私の事を出来損ないと言えば、『同じように受験をして入学した私達も、出来損ないという事になりますよね?』と言ってくれた。


 アイマールなら私を認めてくれるのではと思って、彼女の部屋へと出向いて友達になって欲しいと伝えに行く事にしたのだった。

 

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