第3話 才覚 創造変換

 私はあの男に理魄を壊されてから、自分の現状がどうなってるのか知らないままだった。


 男には理魄を壊したと言われたけど、実際は壊れてないかも知れないと、アリシャが言うので鑑定士を呼んで確認してもらう事になった。


 鑑定してもらうにあたって、気になる点があった。鑑定士はかなり珍しい才覚なので、私の暮らす街には1人しか居ないはずだから、私の理魄がフォースだと知っている。なので理魄がゼロだと知られると問題になるかも知れないので、その事をアリシャに聞いてみた。


「アリシャ、街の鑑定士に鑑定を頼むとフォースじゃないと知られちゃうよ?」

「大丈夫ですよ。街の鑑定士には頼みませんから、私の兄が鑑定士の才覚を持ってるので、事情を説明してるので安心してください」

「身内に鑑定士が居るなんて凄いね」

「週末には兄が来ますので、それまではしっかりと勉強をしましょうね」

「うん、ありがとう」


 そして週末になってアリシャの兄が鑑定しにくる日がきた。鑑定してもらうだけと判っていても、異性が近付くと思っただけで、鑑定してもらう前から気分が悪くなってきたの。その事に気付いたアリシャが私の不安を払拭してくれた。


「お嬢様、部屋の扉を少し開けて遠目で鑑定してもらうので、兄が視界には入らないので安心してくださいね」

「そうなの?はぁ~、良かった……」

「では、扉を少し開けて鑑定してもらいますね」

「う、うん」


 アリシャが部屋の扉を少し開けて、外に目を向けて頷くと扉は直ぐに閉じられた。『えっ』と思うほど一瞬の事だったので驚いた。


「兄に鑑定結果を確認してきますので、暫くお待ちくださいね」

「うん、お願いね」


 アリシャは私に変わって鑑定結果を確認する為に部屋から出ていった。時間にすれば僅かな時間だったけど、私にはもの凄く長い時間に思えたの。


『ガチャ』


 扉が開いてアリシャが部屋へと入ってきて、1枚の紙を手に持って私に渡してくれた。


「こちらがお嬢様の鑑定結果です。ご自分の目で確認してください」

「ありがとう」


【名前】アイマール.レジストリー

【理魄】ゼロ

【才覚】〚創造変換トランスフォーム


「やっぱり……理魄は壊れていたんだね。これじゃ、勉強をしても女学院へは入学出来ないのかな?」

「お嬢様、才覚の説明をお読みください」


 アリシャから才覚を確認するように言われたので、才覚〚創造変換トランスフォーム〛の説明を確認してみた。


創造変換トランスフォーム

 使用者が創造する事で様々な物へ変換する事が出来る能力。


「この様々な物への変換って、私の理魄だった火水風雷も変換出来るのかな?それが可能なら女学院へ入学出来るかも知れないね」

「日々の勉強と才覚の練習を致しましょう。微力ながらお手伝い致します」

「うん、ありがとう。頑張るね!」


 理魄は壊されて全てを失ったけど、才覚の〚創造変換トランスフォーム〛で失った理魄をカバー出来るかも知れないので、この日から勉強と才覚の練習に励んだのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る