第2話 家族不信と家を出る為に

 あのまま私は酷い虐待を受けて、ボロボロの精神状態で屋敷へと戻った。


 私は、親の借金の肩代わりで差し出されたと理解してるので、母が出迎えて声を掛けてきたけど、母の声は耳に届かなかった。

 

 屋敷へ戻って以来、私は家族への不信と異性への恐怖心から、自分の部屋に閉じこもる日々が続いた。そんな私と唯一コミュニケーションを取れたのは、私の専属メイドを務めるアリシャだけだった。アリシャは黒髪に黒縁のメガネをかけたメイドで、私が生まれた頃から専属メイドとして仕えてくれてる。私は部屋から一切出ないので、身の回りの事や必要な物などは、全てをアリシャに頼っていた。


 そんなアリシャは、私の心の内を話せる唯一の存在で、私がいずれ家を出たいという事も伝えていた。そして、私が最も早く家を出る方法を教えてくれたの。


「お嬢様、早く家を出るのなら王都にある学院へ進学されるべきです」

「学院?でも……私は異性と一緒に過ごす事は出来ないのは知ってるでしょ?」

「はい、ですから女学院へ進学すれば学友は全て同性になりますよ」


 なるほど、女子校的なものがあるのね。それなら通えるかも知れないけど、王都となると寮生活になるかな?私は自分の身の回りの事は全てアリシャに任せてるので、何も出来ないので1人で生活出来るのか不安になる。


「それなら通えるかな?でもアリシャが居ないと、私は何も出来ないんだよね……」

「ご安心を。女学院へは専属のメイドを付ける事が可能です。ただ入学試験があるので、勉強する必要があります。こちらがその参考書です」

「ありがとう。試験ってどんな科目があるの?」

「算術、歴史、理魄、理力の試験です」

「私の理魄は……オェッ……」


 理魄の事を考えると、あの男に壊された時の記憶が蘇って嘔吐した後に、恐怖で身震いが止まらなかった。アリシャは直ぐに私を抱きしめて落ち着かせようとする。


「お嬢様、大丈夫ですよ。私が傍に居る限りは必ずお守りしますからね」

「アリシャ……生きてるのが辛いよ……」

「女学院へ入学して家を出ましょう。卒業後は何処か穏やかに暮らせる場所を探しましょう。私はお嬢様から一生離れずにお世話致しますから」

「うん……頑張ってみるよ。もう少しこのまま抱いていてくれる?」

「勿論です。お嬢様が眠られるまでずっとこのままですよ」

「アリシャ、ありがとう」


 私はアリシャに身体を預ける事で安心しながら眠り着いたの。そして、翌日からは家から出る為に必死に勉強を始めたの。






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