第4話・そして俺は生き返った

 激痛に目が覚めた。


「ぎゃあああああああああああああああああ!!」


 背骨に焼いた鉄をブチ刺したような激痛に、涙と鼻水が出てくる。視線だけで自分の下半身を確認。


「マジで無ぇぇぇぇっ!!」

『騒いでないで治癒魔術ヒールを使うんだ』


 魔王の声が頭の中に響くが、それどころじゃない。


「どう使えばっ!!」


 再び視界が黒く明滅する。やべ、死ぬ! これ、また死ぬぅ!!


『私の魔術スキルイメージも君に書きこんでいるから使えるはずだ』


 次の瞬間、これまでの人生が走馬灯のように駆け巡った。

 両親の死。かわいい妹。無能力者と判明したこと。叔父夫婦に引き取られたこと。

 そんな中から治癒魔術ヒールのイメージが閃光のように頭の中で爆発する。


「ぐああああああああっ!! 治癒魔術ヒールぅぅぅぅぅ!!」


 瞬間、千切れた腰から血が噴き出した。


「あっちぃぃぃぃあああああっ!!」

『成功している。さすがに欠損部位が多いからね。数分はかかると思うけど』

「数分!? このぉぉぉい痛みがぁぁぁ……!?」


 気が狂うわ!!

 不意に口から俺の足をのぞかせていたドラゴンが、こちらを振り向いた。


魔物モンスターが君を狙っている。迎撃したほうがいい』

火球操炎フレイムで倒せるわけないだろうがーーー!!」


 小型とはいえ腐ってもドラゴンだ。火球操炎フレイムごときで倒せるわけがない。


『いいから使うんだ!』


 今気づいたけど、俺の右手、肘から先が無ぇっ!!


「手が重くて動かないっ!!」

身体強化オーガメントを使えばいい』

身体強化オーガメント!!」


 鉛のように重かった左腕があがる。こちらに食らいつこうとしてくるドラゴンへと手を掲げた。

 ああ、ドラゴンの口内で俺の下半身やら右腕がグチャグチャのひき肉に……。


火球操炎フレイムぅぅぅ!!」


 手のひらの前で赤い光球が生じる。

 野球のボール大だった火球は次の瞬間、直系一メートルを超える大きさとなり、ドラゴン目掛けて、すっ飛んだ。


 ジュッと肉が焼けるような音を聞いたと思った刹那、火球は空間を抉るように直進し、ドラゴンの頭を消失させた。その背後にあったダンジョンの天井さえ貫いていく。


 意味がわからない。


 一般的な火球操炎フレイムの威力は、弓矢の速さくらいで飛来し、銃弾程度の破壊力となる。大きさだって野球ボール大。大きくてもサッカーボールくらいだ。急所に当たれば魔物モンスターでも人でも殺せるが、防弾ジャケットでも防げる程度の威力だと言われている。


 こんなビーム兵器のような威力ではない。


「なんだよ……これ……」


 心底、驚きはするものの、すぐさま激痛を思い出す。


「ぎゃああああああああ!!」


 傷口に焼けた鉄を押さえつけられるような痛みに泣き叫ぶことしか、俺にはできなかった。

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