これでも仲良し姉弟
朝食を食べ終わり、そろそろ学校に行こうとお姉と二人で家を出る。
いつもは俺が先に食べ終わって学校に行くが、今日はドラマのニュースを見ていたので出るのがいつもより遅くなった。
ニュースを見終わった頃にはお姉も食べ終わり、必然的に一緒に家を出ることになった。
「お姉と一緒に登校すんのっていつ振りだ?」
「小学校以来じゃないかしら。中学に上がってからは、誠が私と一緒にいたくないって言ってたわ」
「あー……なぜかあの頃はお姉と一緒に歩きたくなくてな…。今になって思えば、なんであんなこと言ったんだか……別に嫌いだった訳でもないのに」
「思春期だからじゃない」
「思春期、ねぇ…」
俺とお姉は趣味嗜好は似ているが、見た目に関しては全くと言って良い程似ていなかった。
だから小学生の頃はよく揶揄われたものだ。「姉弟じゃないみたい」って。
……ああ。そうか。そういうことか。
「この姉にして、この弟……あの時は無意識に嫌がってたけど、見た目に関してはお姉の方が断然上だったのが地味にコンプレックスだったのかもなぁ。気にしてないつもりだったんだけど」
「……誠もオシャレすれば、少しはモテると思うわよ?」
「冴えない系男子の俺が?」
「だからこそよ。オシャレで少しでもカバーして、後は中身で勝負よ。見た目以外は完璧なんだから、自信持ちなさい。好きな人が出来た時に困るわよ」
「ふーん。まぁ彼女欲しくなったら考えるわ」
「今からしなさいよ…。髪を横に流すだけで変わるわよ?」
「へーい」
適当に返事すると、お姉が溜息を吐く。
俺を心配してるのはわかるけど、表情一つ動かしてない顔で言われても説得力に欠けるというものだ。
そもそも、俺を好きになる酔狂な女子がこの世にいるのか…。いねぇな、どう考えても。
俺が向こうに合わせなきゃ上手く付き合うことなど出来ないだろう。なんせこんな性格だ。見た目を多少良くした程度で付き合えるとは思えん。
嫌な思いするだけだ。
「性格のことを気にしてるなら、別に直さなくても良いわよ。誠の大事な個性なんだから」
「……お姉って、時々エスパーだよね?」
「私はドラゴンが好きだわ」
「絶対エスパーと波長が合うタイプだと思いますけどね…」
もしくはゴースト。表情が動かない所とか初代ポケ○ンのナ○メさんみたいだし。
はっ!もしかしたらアニ○ケのように爆弾をお見舞いしたら、お姉も笑うのでは?
「いっぺんお姉に爆弾をお見舞いしてみるか…」
「……たぶんポケ○ンの話なのでしょうけど、笑う前に死ぬわよ?」
「おーい!桐ヶ谷くーん!」
お姉と一緒に少しおバカな会話をしながら歩いていると、後ろから声が聞こえた。
まぁ声だけでわかる。ここ数週間ずっと一緒にいたんだからな。その顔と声を見ない日なんて無いくらいに。
やや溜息を吐き、振り向く前に声の人物、鹿野さんが腕に抱き付いてくる。相変わらずスキンシップが激しい。
「おっはよー!まさか登校中に桐ヶ谷君に会えるなんて思わなかったよ」
「俺も朝っぱらからうるさ……元気な人と会えるなんて思わなかったよ」
「あれ?今ディスられかけた?」
「気のせいじゃない?なぁお姉?」
「……………」
「お姉…?どうした」
「いえ、なんでもないわ」
「理乃先輩も、おはようございまーす!」
「ええ。おはよう」
鹿野さんはこの通り朝からでもパワー全開である。
いつもの眩しい笑顔で俺とお姉に挨拶して、鹿野さんが俺から離れて一緒になって登校する。
「ねえねえ桐ヶ谷君。今日って数学の宿題があったよね?」
「あったね。もしかしてやってないの?」
「解ける所はやったけど、ほとんど出来てなくて……お願い!この後教えてください!」
ノート見せて、ではなく教えてと言う辺り、鹿野さんは割としっかりしている人だと思う。
出来る限り自分で解いて、わからない所は誰かに聞くというのは非常に好感が持てる。少なくとも、ただ見せてもらってる奴よりは。
「良いけど、なんで俺なの?二条院さんと藤堂さんは?」
「桐ヶ谷君の方が頭良いじゃん。それに教えるの上手いし、おかげで数学がほんのちょっと得意になって来たんだよ。だから……お願い♪」
上目遣いの眩しい笑顔で、さらにウィンクをしながら頼んでくる鹿野さん。並みの男なら堕ちてるだろう。
「ウザイからやめたら?それ」
「ガーン……桐ヶ谷君ってば辛辣…。でも桐ヶ谷君らしくていいや!」
「そうっすか。なんか知らんけど良かったね」
「……………じーっ」
鹿野さんとそんなやりとりしていると、お姉が俺の顔をじーっと見てくる。
これは相手に対して何かしら不満、もしくは怒ってる時などによくやるお姉の癖だ。
はて?心当たりが全く無いのだが…。
「どうしたお姉?俺なんかしたか?」
「……………いえ、予想以上に仲が良いなと思って…」
どうやら俺と鹿野さんが、俺から聞いた話やテレビで見た以上に仲が良く見えてたらしい。
俺としてはいつも通りに接してるだけなんだが、なにか違ってるのだろうか?
「いつもこんなもんだが?」
「そう……ずいぶんと、まぁ…」
「は?」
「いえ、なんでもないわ」
ふいっと視線を逸らすお姉。変なお姉だな。
「……………まさか誠が、人をここまで受け入れるなんて…」
お姉が何か呟いたが、それは俺の耳に届くことは無かった。
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