ドラマPV完全版
日曜日にやる予定だった撮影はアクションシーンを含めた全てが、なんと一発で撮り終えて時間が余りまくったので最後のシーンまで撮った。
そのままクランクアップを迎えて翌日、月曜日。
撮影の疲れで少々身体はボロボロだが、しかしこれで漸くドラマの撮影から解放され、一般人として生きていけるようになった(予定)俺は、お姉と一緒にニュースを眺めながら朝食を食べていた。
「それで?昨日は帰って来て早々に死んだから聞けなかったけど、俳優は続けるの?」
「死んだように眠ったと言ってくれ。お姉の言葉だと今ここにいる俺はゾンビじゃねぇか。……前々から言ってるけど、続けるつもりは無いよ。やるにしても、そういう学校を卒業してからの方が良いだろ」
「ということは、視野には入れてるのね」
「……まぁ、楽しかったからね」
まさか自分にこんな一面があったとは今でも信じられないくらい、自分でも驚いてる。
それだけ演じるのが楽しかったということでもあるのだが、父さんに似て俺も身体を動かすのが好きだからな。
アクションドラマな上に、鹿野さんのアドリブに付き合わされて退屈する暇も無かったのが一番大きかったかもしれない。
と考えているとそこで、ドラマのニュースが流れた。
『シリウス初主演となるドラマ、『アイドル警察♪シリウス』のPV完全版が公開されました。それではそのPVの方をご覧ください』
「あら?昨日の今日でもう出来たのね」
「元々並行して作ってたみたいだし、出来ないこともないんじゃない?知らんけど」
テレビ画面にPVが映し出され、ナレーションが流れる。
……ナレーションも豪華だな、
『芸能界。それは一見すると華々しく、一般人からするとまるで別世界。一種の桃源郷のように映るかもしれない。しかしそんな芸能界だからこそ、闇が存在する。悪徳商法に手を出す者や、不純異性交遊をする者……大小様々な闇が芸能界にも存在している。そんな闇を暴き、罰する特別な警察組織があった。その名も、『芸能界違法取締課』通称『芸能警察』である』
芸能警察特有のバッジが映し出されて、それを手に取り胸元に付ける人が映る。
なんか杉谷さんが言うと、割とガチで芸能界にそういう闇がありそうに聞こえる。
『そしてこの芸能警察にも様々なグループがある。『主婦(夫)警察班』『社長警察班』果てには『無職警察班』という表向きの職業で警察という身分を隠し、行動している』
「誠。B級感が凄いわ。それに肩書きが仮○ライダーみたい」
「仮○ライダーがB級みたいに聞こえるからやめろ…」
お姉の仮○ライダー発言は完全に社長と無職に反応してるだろ?
ゼ○ワンとオー○か?後者は無職扱いで良いのか知らんけど。
『この物語は、精鋭中の精鋭を集められて構成された『アイドル警察班』の話を描いた物である。彼女たちの名はシリウス。『アイドル警察♪シリウス』である!』
「これ、本当に面白いの?」
「江月監督のことだからナレーションのセリフで遊んでんだろ…」
ナレーションが終わり、本編の一部が字幕やセリフと共に流れる。
【『アイドル警察♪シリウス』彼女たちが挑む事件とは―――】
『闇取引?』
『そうだ。君たちは仕事の関係と称してこの学校に転入し、この街で行われている闇取引の元締めを捕まえて欲しい』
【協力者、『学生警察班』桐ヶ谷誠の過去―――】
『逃げた犯人共を捕まえる為に……』
【黒幕との対峙―――】
『お前は……』
『どうして……貴方が…』
『ドラマ『アイドル警察♪シリウス』初回一時間半スペシャル!』
『行くよ桐ヶ谷君。ここから先は、私たちのけん……』
『言わせねぇよ!?』
最後に杉谷智也さんのナレーションからの、鹿野さんのアドリブ決めゼリフを俺がその口を塞いで止める所でPVは終わった。
果たして深夜アニメのネタが二つ入り交じった奴が通じるのか…。
「……コメディアクション?」
「アドリブ大好き鹿野さんとPVで遊んだ監督に文句言ってください…」
これで本当に人気が出るのか不安になりながら、残りの朝食に手を付ける。
「ところで誠」
「なに?」
「無職って職業なの?」
「気にしたら負け…」
作中じゃあ、ちゃんと警察という職に就いてるんだから、大目に見てやって欲しい…。
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