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『テレレテレレテレレテレレテレ、テレレテレレテレレ♪テーテェレレ~♪』
次の日の朝。スマホの目覚ましに設定していた曲で目が覚める。
昨日初めてウ○娘のライブシナリオをやって、勢いで神曲をダウンロードして目覚ましに設定したが……正直失敗だった。
変に高い音は目覚ましに不適切だな…。頭がガンガンする。
なんか大事な用がある日とかに設定するのは有りだろうけど。
「おはよう…」
「「「おはよう」」」
パジャマのまま階段を下りてリビングに入ると、お姉だけでなく母さんと父さんが朝食を取っていた。
これは珍しいこともあるものだ。親二人は出勤時間の関係で、いつもはもう少し遅く起きてくる。
「早いね。今日何かあんの?」
「あるわ。貴方がテレビに出るっていうね」
「大事な息子がテレビで紹介されるんだからな。見ない訳にはいかないだろう?」
母さんは普段から感情が表に出ないからわからないけど、これでも俺とお姉をかなり大切に想ってくれてる。小学校の運動会でカメラを連写するくらいには。
なお父さんはそれ以上である。控えめに言ってウザイ。
昨晩。風呂から上がった後、別れ際に連絡先を交換した(させられた)鹿野さんから電話があった。
内容は主に三つで、一つは俺のテレビ出演に親の許可が欲しいということ。
この話は既に終わっていたことなので、親から許可は貰ったことを伝えるだけで終わった。
あと二つが、キャストを変更することになったことを今朝のニュースで発表したいから、俺の名前と最低限の情報を公開しても良いかというもの。
それと来週、ドラマの宣伝の為に出演するバラエティ番組にシリウスと一緒に出て欲しいというものだった。
バラエティ番組の方は少し悩んだが、俺はどちらも了承した。
遅かれ早かれ、キャストが俺に代わったことは発表しなきゃならない事だと思っていたからだ。
それにあのイケメン俳優を楽しみにしていたファンが一杯いたはずだ。早めに言っておかないと大炎上待った無しだろう。
『まぁ、完全に抑えられる訳じゃないんだけどね~』
それでもやらないよりマシ、と鹿野さんは言っていた。
せめてプチ炎上くらいで終わって欲しいものだ…。
「ニュースでは顔は出ないって言ったろ?」
「それでもだ。お前が有名人になって、大出世への一歩になるかもしれないんだからな」
「ちゃんとした俳優になる気は今のところ無いんだけど…」
一人先走ってる父さんに言いながら、俺も席について朝食のパンにブルーベリージャムを塗って食べる。
うちの朝食はパンの時もあれば、米の時もある。つまりどっちも派。
朝食に舌鼓を打っていると、いよいよ例のドラマについてニュースが流れた。
まずはイケメン俳優についてだ。
『続いてのニュースです。昨日夕方頃に、俳優の
天野大翔というのが、俺がやる男子高校生役だった人だ。
テレビに映し出された天野大翔は、やはり誰もがイケメンと認める顔をしている。平凡な俺とは大違いだ。
今でも俺なんかで代役が務まるか不安だ。てかこの顔見て余計不安が増したよ…。
『しかしそうなると、シリウスが初主演で話題のドラマにも影響が出ますよね?』
『はい。実はそのことについて、江月監督から発表がありました。VTRがございますので、そちらをご覧ください』
アナウンサーがそう言うと、画面が切り替わり、江月さんが映し出される。
『○○テレビの皆さん、おはようございます。監督の江月です。天野大翔さんの件は非常に残念です。せっかく今回のドラマを彩ってくれる数少ない俳優だったのですが―――』
恒例の視聴者に向けた挨拶をして、今回の件を語りだす江月さん。
天野大翔の話に始まり、次に急遽キャストを変更することになったことを話し始めた。
『実はですね。天野大翔に代わる良い代役がいると、オリオンちゃんから紹介がありましてね。その人はオリオンちゃんの友人でございまして、一般の方なんですよ。俳優じゃないんです』
その言葉に画面端に表示されているアナウンサーたちが驚いた表情をする。
ついに俺の情報が公開される所まで来た。
あかん……そこに俺はいないのに、ちょっと緊張で胃が…。
『今はまだ顔をお出しすることは出来ないんですけど、本人からは名前とある程度の情報は公開して良いと了承を得ました。スタジオの方でも紹介されると思いますので、
最後にそう締め括り、画面がスタジオに切り替わる。
『はい。ということで、早速ご紹介していきたいと思います』
若干苦笑いしながら、例の猪上アナウンサーが俺の情報が書かれたパネルを取り出す。
『名前は桐ヶ谷誠さん。年齢は現在16歳で、身長は170センチでやや細身の体型だそうなんですが……お顔はどうやら江月監督曰く、至って普通らしいんですね』
『ええ!?天野大翔さんの代役なのにですか?』
男性のアナウンサーがそう言う。
まぁそんな疑問が出てきて当然だわな。イケメン俳優から急にフツメン一般人になるんだから。
『そうなんですよ。というのも、実はこの桐ヶ谷誠さんの性格が関係してるそうなんですね』
『性格ですか?』
『はい。こちらのパネルにも書いてあるんですけど、シリウスのオリオンさん曰く、『他人に興味がなく、愛想が無い上に口も悪いらしいんですけど、根は凄く優しくてたまに見せる優しい笑顔が素敵でギャップ萌えを感じる』ということなんですね』
おい鹿野さん。後半アンタの私感バリバリですよ…。そう思ってんの鹿野さんだけだからね…。
『この性格と容姿が、天野大翔さんが演じる予定だった男子高校生と瓜二つとのことで―――』
『でもこういうのって今までイケメン俳優が使われてたじゃないですか?個人的にあのシリウスの初主演ドラマで、この人選はどうかと思いますけど―――』
そのままある程度の俺の情報が公開されていき、最後は明らかに期待していない顔で『桐ヶ谷誠さんに期待しましょう』と締め括り、次のニュースへと移った。
そんな顔になるのは仕方ないと思うが、流石にあの男性アナウンサーの発言にはイラッとしたな…。まぁ言いたいことはわからないでもないし、気にしないでおこう。
少しして、お姉がスマホをこちらに向けながら話しかけてきた。
「誠」
「なに?お姉」
「貴方の名前、ツブヤキのトレンド一位になったわよ?」
「まだ俺のニュース終わってから五分も経ってないのに!?」
「はっはっはっはっは!シリウスと天野大翔の人気を甘く見ていたな誠?どちらも国民的スターと言っても過言ではないんだ。当然だろう」
「誠の紹介が始まってから理乃と一緒にツブヤキを見てたけど、ずっと話題になってたわよ」
「マジでか…。……………はあぁぁぁ……来週が怖くなって来た…」
まさかここまでの騒ぎになるとは思ってなかった俺は、来週のバラエティ番組の出演に不安を覚えながら、盛大な溜息を吐いた。
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