一応友達だけど、気持ちは友達未満

『商店街に来て欲しいの。そこで詳しい説明をするわ』


「―――て言われたから来たけど…」


 二条院さんに商店街で頼みたいことがあるからと、来たは良いものの……どこ集合か話してなかったな。

 履歴から藤堂さんの携帯にかけたけど、コールが鳴るだけで一向に出る気配が無かった。

 これでは合流なんて出来んぞ…。


 ……あぁでも、ついでにシュークリームを買いに行くことは伝えておいたから、そこにいるかもな。

 とりあえず、そこの店まで行くか。


――――――――――――――――――――


 『SUGOIDEKAIシュークリーム』というシュークリーム専門店に着く。

 地元じゃかなりの人気店の為、夕方でも人が並んでる。

 だけどおかしいな?夕方は昼間より人が少ないはずなのだが、今日は昼間と同様の凄い行列だ。

 まぁそんな日もあるか?


 不思議に思いながら列に並んで待っていると、後ろから声をかけられた。


「ヤッホー!桐ヶ谷君!学校ぶりー」


 凄い聞き覚えのある声を聞いて、面倒臭そうな顔しながら振り向く。実際面倒です。


「なに?鹿野さん…」


 やはり声をかけてきたのは、転校して早々冷たく接せられてるにも関わらず、俺と仲良くなりたいなんて言い出した鹿野さんだった。


「ぶーーーっ。そんな顔しなくてもいいじゃんか…。私たち友達でしょ?」

「そうだけど……ただ一緒に飯食うだけの関係だろ?」

「そうかもだけど……それ以上にもっと仲良くなりたいんだよぉ、私は~」

「俺は結構です~。鹿野さんとは学校だけの関係でありたいんです~」

「……それはつまり、学校限定の秘密の関係でいたいってこと?そ、それはそれで特別な友達って感じがして……良いかも!」

「そのお花畑な脳内を伐採してやりたいよ…」


 ダメだ。どう転んでも鹿野さんのペースに呑み込まれる。

 早くシュークリームを買って二条院さんたちと合流を………ん?


「そういえば、二条院さんと藤堂さんは?一緒だったんじゃ…」

「二人には桐ヶ谷君を呼んでもらう為に協力してもらっただけだからいないよ?」

「そうか。じゃあシュークリーム買ったら帰るわ」

「わかった!じゃあ一緒にシュークリームを食べよう!」

「あれれ~?おかしいぞ~?俺の言葉が完全に無視されてるー………はぁ、わかったよ。俺が折れれば良いんだろ?」

「やた!桐ヶ谷君と放課後プチデートだ!」

「はいはいそうですね。でも仮にもアイドルなんだから、その言い方やめようね」


 結局鹿野さんと並ぶことになり、一緒にシュークリームを食べることになった。


 だがそこで、いきなり大きな声が商店街に響いた。


「カーット!!!いいよ~今の!凄く良いのが撮れた!」


 そんなことを言いながらこちらにメガホン片手に歩いてくるのは、若い女性とテレビで使うような立派なカメラを担いだ男性だった。

 明らかに何かの撮影していたようだった。


「いやー。ありがとう!凄いねー、君。鹿野さんが全部アドリブで行けるって言った時は心配だったけど………いやはや、まさかここまで設定そのまんまの子だとは思わなかったよ!」


「は?……え?………鹿野さん。どういうこと?」

「えーっとねぇ……そのぉ…」


「ああ。ごめんなさいね。訳も話さずにこんなことをして。肖像権とか色々問題あるのは承知してる。その辺も踏まえて、そこの喫茶店で話し合おうか。時間は大丈夫かな?」

「ええ……まぁ…」


 本当に何が何だかわからず、俺は監督らしき女性と鹿野さんと一緒に『喫茶サエキ』と書かれた喫茶店に入って行った。

 あ。隆二の家だこれ。

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