第十九話 意志と再会
「はぁああ!!」
俺は人のいない広場に入り込み、ガーネットの攻撃を避けながら盾の発砲で攻撃を仕掛けた。ガーネットの強硬な体にはほとんど通じないが、攻撃の手を緩めなかった。
「このガキ!」
「!?」
突然、ガーネットが宙に飛び上がり、俺に向かって拳を振り上げてきた。慌てて地面を転がって回避し、ガーネットは地面に巨大な穴を作った。すぐに体を起こすが、ガーネットは姿を消してしまっていた。
「どこだ!?」
目を凝らして地面を見つめると、砂埃とともに地面に亀裂が走っているのを見つけた。ガーネットが地中移動しているのに気付き、亀裂に向かって盾で射撃を行った。しかし、あまりの速度に付いていけず、弾を外してしまう。
「くそっ! モグラみたいなことしやがって……!」
「グラァアア!!」
その時、ガーネットが地面から飛び出してきた。真っ赤な角が目の前にまで迫り、ギリギリで避けたが、尻尾に叩き付けられて吹っ飛ばされてしまう。付近の街路樹に激突し、木粉を上げながら真っ二つに折れてしまう。
「くっ……!?」
「ふんっ、あの女と比べ物にもならんな」
俺はガーネットに向かって再び盾で発砲しようとするが、トリガーを引いても赤い光が出なくなった。弾切れのようだ。
「えっ、もう終わりかよ……!?」
その時、ガーネットが拳を振り上げてきた。咄嗟に盾で受け止めたが、衝撃が重すぎて腕に鈍い痛みが走った。怯んだ隙を狙われ、腹を蹴り上げられて地面に倒されてしまう。
「うわっ!」
「盾の方は中々だが、所詮貴様は小者だ!」
俺はガーネットに首を掴まれて宙に放り出され、腹を蹴り付けられる。吹っ飛ばされた俺は謎の建物のガラスを突き破って侵入し、中にいた人々は次々と建物の外に飛び出していった。
「きゃぁあああ!」
「駄目だ……こいつ強過ぎる……!」
その時、俺は服のポケットに違和感を覚えた。
「……まさか!」
俺はポケットを漁り、アクアマリンが落とした青い宝石を取り出し、腕輪に読み取らせた。その直後、ガーネットが建物の壁を破壊して侵入してきた。
「何っ、それはまさか……!」
『アクティベート、アクアマリン・スピア』
俺の目の前に細長い青い結晶が出現し、それが砕けると同時に透き通るような青い刃の槍が現れた。アクアマリンが使っていたものと同じ槍だった。
「あいつの武器か……!」
「何故貴様が持っている!」
ガーネットが殴りかかってきたが、俺は盾で攻撃を塞いでガーネットの脇腹を槍で刺した。
「ガッ!?」
次の瞬間、冷たい青い光が広がり、ガーネットの脇腹に凍りつくような氷結が発生した。
「効いてる……! 行けるぞ!」
「このガキ! ルインクリスタルとそいつを渡せ!」
ガーネットは牙を振り下ろして来たが、俺は槍を振り回して顔面を貫き、腹を斬り付けた。ぎこちない動きだったが、槍はまるで自分の意思を持つかのように形を変え、水のようにしなやかに形を変えながらガーネットを攻撃した。ガーネットはデストロイクリスタルを吐き出すとともに凍結を起こし、次第に動きが鈍くなっていく。
「よしっ、あと少しで……」
「こうなったら……!」
その時、ガーネットは右手からオレンジ色の光を取り出した。その正体は、レイから奪い取ったラヴァクリスタルだった。
「あっ、それ!」
ガーネットは不気味な笑みを浮かべてラヴァクリスタルを飲み込んでしまった。次の瞬間、彼の胸が眩しいオレンジ色の光で脈動し、全身が燃え上がるような熱気を放ち始め、身体が更に巨大化した。
「熱っ!? これって……!」
レイがラヴァクリスタルを使った時と同じ現象だった。ガーネットの身体から氷が剥がれ落ち、ガーネットの全身が真っ赤な炎に包まれた。
「!」
その瞬間、あの時の悲劇が頭を過ぎった。あの雨の日、家族を残して炎に包まれる車……。思わず足がすくみ、体が動かなくなってしまう。
「皆……!」
「ガァアアアア!!」
「しまっ……!?」
正気を取り戻した時には、既に手遅れだった。全身が炎に包まれた状態で、ガーネットの猛スピードで迫る体当たりを受けてしまう。その衝撃で、俺は窓ガラスを突き破り、地面に転がった。
「うわっ!」
「ウォオオオオ!!」
更に、ガーネットは俺の身体を持ち上げ壁に引きずり回した。壁、柱、骨組み、次々とぶつけられ、建物が崩れ始めた。
「がはっ!?」
「ヌァアアア!!」
全身が悲鳴を上げる中、俺はガーネットの尻尾に叩き付けられ、地面に放り出された。力の差が圧倒的過ぎて、勝ち目が全く見えなかった。
「はぁ、はぁ……」
「手こずらせやがって……!」
「こんな所で……負けるかよ……!」
俺は荒い息を吐きながら崩れ落ちるが、槍を杖代わりにして、震える足でゆっくりと立ち上がった。痛みも出血も気にしている余裕は無かった。ただ前を見据える。それだけだ。
「レイがいないなら……俺が何とかしないと……!」
「何を抜かす! あんな小娘など、意志を継ぐ価値も無い!」
ガーネットが嘲笑を浮かべながら近付いてきた。その瞳には、狂気とも言える怒りが宿っていた。
「そんなことはねぇ!」
俺はデストロイクリスタルを拾い、ガーネットに向かって盾で射撃を行った。しかし、ガーネットの動きは更に速く、なりその巨体を信じられないほど軽快に動かして攻撃をかわしてしまった。
「早い!?」
ガーネットは俺に向かって目から赤い光線を放った。目の前で爆発を起こし、俺の体は大きく飛んでしまう。
「だぁああ!?」
吹っ飛ばされた俺はテーブルを破壊して地面に叩き付けられる。圧倒的な力の差を見せつけられ、勝ち目が一気に失われた。
「はぁ……はぁ……」
「運も尽きたな。どうする? 泣きつく相手もいないとは寂しいだろう」
ガーネットは全身から炎を上げながら、俺にゆっくりと近付いた。炎に恐れながらも、俺はもう一度立ち上がった。
「ここでお前に背を向けて逃げれば……昔と何も変わってない……! もう少しだけでも抗ってやる……!」
「笑わせるな!」
俺はガーネットに急接近され、巨大な拳で全身を打ちのめされる。更に、地面に叩き付けられて手足を押さえ付けられてしまい、身動きが取れなくなってしまう。
「あいつとあの世で仲良くな!」
「くそっ……!」
ガーネットは俺に向かって大きく口を開いた。口の中が赤く光り出し、俺は覚悟して目を瞑った。
その時、ガーネットの背後に青い光が飛び込み、鋭い風切り音とともにガーネットの背後で青い光が閃いた。
「ギャァアア!?」
「うわっ!?」
押さえ付けていた力が消え、俺の体は投げ出されるように解放され、地面に転がり落ちた。痛みをこらえながら顔を上げると、一人の人影が目の前に降り立った。
その者は静かに立ち上がり、振り返った。輝く青い髪。その姿を見た瞬間、言葉を失った。
「あの世で仲良く、ですか……」
青い髪が輝き穏やかな声が響いた。彼女の姿を目撃した俺は、胸が締めつけられるような感情がこみ上がった。
「レイ……」
「いつも物騒な所でしか会いませんね」
震える声で名前を呼ぶと、彼女は微笑みながら手を差し出してきた。
現在使えるルインクリスタル 一個(エタニティ)
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