第6話 車内の会話

基本的に、お客さん同士の会話には入らないようにしている。なるべく存在感を感じさせないように心がけるくらいまである。だが、どうしても会話が耳に入ってしまう場合がある。

それはお客さん同士が喉元まで出てきてるのにはっきり出てこないアレなどといっているときに、自分は名前が出てきてるときである。これはもう口がムズムズしてくる。「運転手さん、知らない?」って聞いてくれないかな、そうすればこの場のみんなすっきりするのに、と思いながら到着するということがあった。


さきほど存在感を感じさせないように心がけるといったが、裏目にでることもある。

夜に乗ってきたカップルがいちゃつくことがあるのだ。たいてい最初は甘い雰囲気の会話で終わるのだが、乗車時間が二十分から三十分になってくるとボディタッチが混じってきたり、あまつさえキスなどもすることもある。これが電車ならほかの乗客から冷たい視線を浴びるだろうが、私の存在はきっと完全に忘れられているのだろう。


そして私は黙って運転を続けるのだが、心の中ではこう思うのだ「・・・リア充爆発しろ!!!!」と。

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