第5話 ありそうでない話
ありそうでないことがいくつかあって、ひとつは警察手帳によるタダ乗りだ。私含め同業の友人にもそのようなシチュエーションにあったことがないので少し調べてみたが、その場で清算したり後日請求になるなどしてタダ乗りが発生することはおそらくないようだ。以前勤めたタクシー会社の初任研修でもそういった場合の対応は設定がなかったので、普通の会社員同様に経費として処理するのだろう。
もうひとつは心霊関係だ。だいたいが深夜に乗ってきたお客さんが行き先に墓地とか霊園といわれる、あるいは深夜に墓地とか霊園近くでお客さんを乗せてといった具合に話がはじまるだろうが、ひとまずどちらもほとんどあり得ない状況だ。まず、行き先に墓地とか霊園を設定するお客さんは深夜いない。たとえ近所に行くのだとしてもほかの目印か住所で伝えられる。そして、深夜に墓地や霊園近くをお客さんを探しながら走るタクシーはいない。深夜に近くを走らざるを得ない状況になったとしても、なるべく人のいそうなところを通るのが普通だ。さらに今は車内に防犯カメラがあるので、もし心霊現象が起きれば幽霊そのものかドライバーがひとりで後部座席に話しかけるといった現象が録画されるはずだ。
だから、タクシーをやっていて心霊現象にあうことは今後もないはずだ。あってはならない、いや絶対ないんだってば。
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