9手目 自分以外のヒーロー。

3分ぐらい経った。



トントン。



ドアがノックされ、「失礼するよ。」と言い、顔の濃いオッサンが入って来た。



オッ:「初めまして!ガチャガチャマンくん。」



オッサンはそう言って、名刺を差し出した。

本拷多消ぽんごうたけし|’と書いてある。



本拷:「今回のオペレーターは、私だったんだ。」


ガチ:「はあ。どうも。」


本拷:「お疲れさん!デビュー戦で、討伐とは、凄いじゃないか。」


ガチ:「いえ、死にかけたんで...。」


本拷:「うん。市民を守るのが義務とはいえ、今後は無理はしなくていいんだよ。」


ガチ:「その事なんですが、私はもう、ヒーローを辞めようと思っています。」



「ふむ」と言ったように見える顔で、本拷は頷いた。

予想されていたみたいだ。



本拷:「理由を聞こうか。」


ガチ:「死を覚悟した時、『このまま死ぬのは嫌だ』と思いました。」


本拷:「覚悟したけど、嫌だった?」


ガチ:「もうダメだって諦めたけど、苦しくて、辛くて、嫌だって...。」


本拷:「そうか。それはね、とっても大切な感覚だね。」


ガチ:「え?」


本拷:「死ぬって事がいかに苦しくて辛いか、知った上で生きるのと、知らないで生きるのでは、時間の濃さが違ってくる。」


ガチ:「そう...なんですかね?」


本拷:「今後、君のヒーローとしての活動を続けるなら、より一層深い『熱さ』を持てるはずだ。」


ガチ:「いやもう、やりたくないですね。」


本拷:「ヒーローを辞めてただの一般人になったら、その苦しみをばら撒く魔ジんと戦う力を大幅に失うぞ。」


ガチ:「うーん、でももう、自信が無いです。」


本拷:「よし、わかった。それが問題なら、もう1人、ヒーローをこの場に呼ぼう。」


ガチ:「はあ。」


本拷:「そのヒーローと話してから、決めると良い。」



本拷はそう言うと、部屋を出て誰かを呼びに行った。

そしてすぐに戻って来た...。



女声:「こんにちは。初めまして。」



なんか、コスプレした女を1人連れて来た。



女性:「私の名は、ハレワタール!あなたと同じ、ヒーローです!」


ガチ:「あ、初めまして。」


本拷:「ハレワタール、じゃあ、早速、お願いするよ。」


ハレ:「わかりました!」



。o(何が始まるんだ?)



ハレ:「♪ナドナドみたいに地球を溶かしたら...」



なんか歌い始めたぞ...。

しかもキレッキレのダンス付きだ。



~3分37秒経過~



ハレ:「晴天白日せいてんはくじつ!!」



何を見せられているんだろう?と、気色悪さで胸がいっぱいになったところで、ハレワタールが力強くフィニッシュの言葉を放った。

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