第11話 「借り」と言われて

スマホが鳴っている。

この着信音はわたしのじゃない。


「ハルキさん、起きてください。スマホが鳴ってます」

「ん……」

「スマホが鳴ってます」

「うん」


ハルキさんはサイドテーブルに手を伸ばすと、液晶に表示された画面をしばらく眺めてから電話に出た。


「はい」


「順調」


「大丈夫」


「今? 寝てた」


「明日まで?」


「はい。じゃあ」


電話の様子で察しがついた。何か用事ができたんだ。


「仕事しないといけなくなった」

「わたし帰りますね」

「うん。住所書いてって。本送るから」

「ありがとうございます。着払いで……」

「いいよ。受け取って。唯織には借りができたから」



「借り」って、わたしはそんなふうに思ってないのに……

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