第7話 よく知らない人なのに
高島公園の時計台の下には約束の時間の40分前に着いた。
土曜日だったからか、外は寒いというのに、子供連れの家族がバトミントンをしたり、犬を連れた人が散歩をしていたり、公園には多くの人がいた。
だから、1人で時計台の下にいるわたしは逆に目立ってしまっていたに違いない。前を通り過ぎる人達がこちらに視線を向けるのがわかった。
約束の時間の30分くらい前になって、スマホが鳴った。
画面には「ハルキ」と表示されている。
「唯織?」
「はい」
「行けなくなった」
「わかりました」
少し間があった。
「また今度」
なぜか、そのまま切ってはいけない気がした。
「何かあったんですか?」
無言。
「熱出た」
「お医者さんは?」
「動けないし」
「今どこですか?」
「ホテル」
「この前と同じとこですか?」
「そう」
「ひとりですか?」
「そうだけど、さっきから何? うざい」
「今から行きます」
「来るな」
「行きます」
電話を切ると、近くの薬局を検索した。
ハルキさんは、よく知らない人で、おまけに意地悪。
でも、熱があるというのにひとりで病院にも行けず寝てるなんて、ほっとけない。
一人暮らしの自分が熱を出してしまった時、どんなに心細かったかよく知っている。お水が飲みたくても取りに行くこともできない。お腹が空いても食べることもできない。
それに、とても寂しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます