第7話 白河先輩は問題児?

 俺と勝斗が恋愛相談部に入部して数週間が経った。

 あれから大森は、町田と一緒に図書委員になり、アプローチをしているみたいだ。 それにしても委員決めの際、男子の図書委員の立候補者が三人出たときは焦った。 まー、かなり気合いの入っていた大森がじゃんけんで、その枠を勝ち取っていたから、良しとしよう。

 ちなみに、大森からアプローチを受けている町田はというと、大森と仲良さそうにしており、クラスの女子からその仲をからかわれた際には、否定しつつも満更でもなさそうにしている。 大森は性格も良いし、顔は童顔だが悪いわけではない。 むしろそういうのが良いという女子もいるから、もしかしたら、町田の好みなのかもしれない。

 二人の仲が良さそうなので一安心。 とりあえずは大森から追加で相談が来ない限りは、当事者たちに任せておこう。


 さて、話は変わるのだが、現在俺はとある問題に直面している。 その原因が、目の前にいるのだが、は机に寝そべり、よだれを垂らしながら寝ている。


「うーん、もう食べられないよ……」

「……」


 俺は、テンプレのような寝言をいうそいつを「スパン」とひっぱたく。


「――ん!?……あ、あれ?俺は一体……?」

「おはよう。」

「お、おはよう……?――はっ!そうだ、テスト勉強をしていたんだ!」


 そう、俺たちは今テスト勉強中なのだ。 一学期の中間テスト一週間前になり、授業中寝てばっかりの勝斗が「勉強を教えてくれ!」と涙目になりながら俺に頼み込んで来たのだ。

 それだというのに、こいつは俺がトイレに行っている間に、ぐーすかと寝ていたのだ。


「ハァ……」

「?……どうした?溜め息なんかついて」

「誰のせいだと思っているの。今回は中間テストだし、範囲も狭いから良いけど……この調子だと、本当にやばいよ?」

「まー、そのときは……なんとかなるだろ!」


 あまりにも楽観的な勝斗に、俺は思わず拳を握る。 その様子を見て勝斗が慌てて謝罪し、俺たちは勉強を再開する。

 ちなみに、俺たちが勉強している場所は恋愛相談部の部室だ。 本来、テスト一週間前になると全ての部活が休みになるのだが、テスト勉強目的であることを先生に伝えれば部室を使うことは出来るため、ここで勉強をしている。 元々は、教室で勉強をしようとしていたのだが、教室には他のクラスメートがいるため勝斗の集中力が続かないと思い、部室を使っている。


 俺たちが勉強していると部室のドアが「ガラガラ」と開いた。


「お、本当に勉強してる!」

「お疲れ様二人とも」


 その声に俺たちが振り向くと、入ってきたのは、白河先輩と水野先輩だった。

 俺と勝斗も、先輩たちに「お疲れ様です」と挨拶する。


「いやー、テスト勉強しようと思ったんだけど、教室だと集中出来なくて」

「教室だと、直美は他の子たちに声をかけちゃうからね」


 そう言いながら、白河先輩たちが席につく。

 そして、水野先輩の言葉に白河先輩が反論する。


「だって、うみちゃんや椎菜しいなちゃんと話すの楽しいんだもん!」

「あんたねー……そのままだと赤点取って、また補習になるわよ?」


 白河先輩に水野先輩が溜め息をつく。

 ん? 待てよ、また補習?


「もしかして、白河先輩って補習になったことあるんですか?」

「そうよ。合計で三回、補習になってるのよ」


 俺の質問に水野先輩が答える。 白河先輩本人は「四回だよ!」と何故か少し怒っている。

 四回って……よく進級出来たなこの人……そもそも、この高校の学力から考えて入学できたことが奇跡なのでは?

 そんなことを考えていると、勝斗が先輩たちに質問した。


「この高校の補習ってどんな感じなんですか?」

「え~とね……丸々一週間、放課後を使って五十分間勉強するって感じかな」


 勝斗からの質問に白河先輩が、その辛さを思い出すかのように答える。


「え、めっちゃめんどくさいじゃないですか!」

「そうだよー?それに、最後に小テストをするんだけど、合格点を取れなかったら……次の週に合格するまで、何度も、何度も!小テストさせられるの!」


 白河先輩が恨みを吐き出すかのように語る。 その様子を見るに、多分合格点が取れなかったのだろう。

 そこまでするのかこの高校……


「あのときは確か、直美は金曜日に合格もらってなかったっけ?」

「うぅ……やめて!あのときの苦痛は思い出したくない……!」


 水野先輩の言葉に、白河先輩が頭を抱えながら叫ぶ。

 てか、金曜日ってことは、丸々一週間小テストをしていたってことか? それって最早、先生たちのほうが大変だと思うのだが……

 とりあえず、俺はこの場にいない先生たちに手を合わせておく。

 すると、補習の話を聞いて頭を抱えていた勝斗が、何かを思いついたかのように口を開いた。


「あっそうだ!それなら、蓮のお姉さんに勉強を教えてもらえば良いんですよ!」

「え?」


 勝斗の提案に先輩たちが首をかしげる。

 さて、なんか面倒くさいことになりそうだ。

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