第4話 ダメ出し終了!ここからはアドバイス
さて、どうやら俺は言い過ぎたみたいだ。大森は俯いて何も言わないし、先輩二人も何を言えばいいのか、わからないようで黙ってしまっている。正直、まだダメ出しは終わっていないのだが、はっきり言って気まずい。
俺がどうしようかと考えていると、勝斗が笑いながら大森の背中をバンバン叩いた。
「ふはははは……!そう、落ち込むなって!別に町田さんに振られたわけじゃないんだからさ!」
「き、木ノ下君……!」
勝斗の言葉に大森が目をうるうるさせながら、顔を上げた。本当に、勝斗のポジティブさには感謝しなくては。
勝斗は、大森が顔を上げたのを確認すると俺の方を見た。その目には、「これ以上は良くない。」という思いが込められている気がする。
「それで……蓮としてはどうするべきだと思うんだ?」
勝斗の言葉に残りの三人も俺を見る。
「簡単な話だよ。まずは仲良くなる……ただそれだけ。」
俺の言葉に大森の異議を唱える。
「いや、それが出来たら苦労しないよ!?今日だって、話しかけようと思っても、緊張して出来なかったし……」
「それなら、話さないといけない状況にすればいいよ。」
「「「……?」」」
俺の言葉に勝斗以外の三人が首を傾げ、勝斗は……思考を放棄しているな。うん。
「グループでも良いし、二人っきりでも良い。とにかく会話をする機会を設ける。」
「でも、それって難易度高そうだけど……」
「確かに本来なら難易度は高いよ。でも、入学してすぐだから、絶好のチャンスがあるんだ。」
「絶好のチャンス……?」
三人が期待するかのように俺を見る。
「大森、明日のHRで委員決めがあるよね?」
「うん、先生がそう言って――ハッ!」
「そう、同じ委員になれば自然と話す機会が増える。だから、まずは町田と同じ委員に立候補――」
「待って待って!その方法を使うには、町田さんが何の委員に入るか、わからないといけないんじゃない?」
水野先輩が疑問を唱える。
そう、この方法は相手が何の委員になりたいかで成功率が変わる。もし仮に情報なしで挑んだとして、相手が手を挙げてから、こちらも手を挙げる……という手段を使っても、その委員が人気だった場合、こちらが手を挙げる前に枠が埋まってしまう。
それに委員によっては、話す機会が少ないものもある。例えば、わが校の美化委員は長期休み前の大掃除くらいしか活動することがほとんどない。他にも、保健委員も怪我人や体調不良者が出ない限り、健康診断のときに保険医の手伝いをすることくらいしか活動がない。そもそも病人が出たとして対応するのは、基本一人だから意味がない。
だから、明日のHRまでに情報収集をしないといけない。もし、町田が美化委員や保健委員志望なら、代案を考えなくては。
俺がそう考えていると、勝斗が思い出したかのように口を開いた。
「あっそういえば、町田さん、図書委員に入ろうかなって言ってたぞ。」
「それほんと?木ノ下君。」
なんでこいつがそんなこと知っているんだ?町田とは接点がなかったはずだけど。
「はい、町田が他の女子と話しているときにそう言ってたのを聞いていたので。」
「盗み聞きかよ。」
「ちょっ、別にそういうのじゃないって蓮!たまたまだから、たまたま!」
勝斗が慌てて否定する。
それはそうと、図書委員か……確か週に一回のペースで活動があったはず、それに放課後に残ることもあるから人気も無さそう。うん、良い情報が入った。
それにしても、普段からその記憶力を発揮してくれたら、テストでも良い点取れると思うんだけど。
「今、なんかバカにした?」
「いや、別に……ただ、普段からその記憶力を発揮してくれたら、テストでも良い点取れると思うんだけどなーって。」
「バカにしてるじゃん!違うんだ!あれは俺の頭に残らない勉強という存在が悪い!」
意味不明なことを言う勝斗を置いといて、俺は大森の方を向いた。
「まー図書委員なら週一で活動があるはずだから、話す機会は多いと思うし、どうかな?」
「うん!わかった!まずは立候補してみる!」
「うん、ファイト。」
とりあえず、これで良いだろう。まずはお互いのことを知ることが大事。お互いのことをよく知らないまま付き合って、相性が合わなくて破局するなんてよくある話だし。
大森は満足したのか、俺たちに感謝述べ「よし、そうと決まれば話題を考えないと!」と言い、部室を出ていった。気が早いし、話題提供くらいならするのに……とりあえず、その気合いが空回りしないことだけを祈っておこう。
それにしても、図書委員か……
俺は過去のことを思い浮かべて、頭を横に振る。
「考えちゃ……だめだ。」
俺の小さな呟きは、誰にも聞かれてなかった。
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