第11話 奈落へと

迎えた当日。緊張で吐きそうになった。搬入の朝、動揺しすぎて家で色々とやらかしていた。炬燵とテレビの電源プラグを間違えて抜いてしまったり、水をこぼしてしまったり。相当だったな。これ。あと、移動のときに何故か音楽を聴いて泣いてしまったり。だいぶ影響されていた。搬入中も怖くてしょうがなかった。見れば見るほど他の作品が上手く見えて、もしかしたらだめなんじゃないかって。そんな思いがぐるぐるして、気が気じゃなかった。このときも部員が励ましてくれて、心の支えになったなあ。「大丈夫」って言葉がどれだけ私を救ったか。あのときの私はこの6文字だけかけてもらえればもうなんでも頑張れてた。搬入の後みんなに励まされながら取ったプリは爆笑だった。みんなで書道部ポーズをして、時間に間に合わなくてみんな事故ったときもあって楽しすぎたな。そんなこんなで午後を楽しく過ごし、帰ってからはもうピリピリしていた。落ち着きなんてなかった。結果が来るのを首を長くして待っていた。19時10分。ついに連絡が来た。


全国には行けなかった。奨励賞だった。


急速に視界が色褪せて、石のように身体が硬直した。画面を見て竦むことしかできなかった。親の言葉も、友達への連絡も、先生からの連絡への返事も全部考えられなくなった。最初に感じたのは家族、友達、先生、みんなへの申し訳無さ。あんなに応援してくれたのに。恩返しをしようと思っていたのに。これじゃ何もできない。次に感じたのは、自分のこと。これから何を目標にすればいい?いや、そんな小さいことじゃない。全国出場っていう夢が潰えた今、私はこれからどうやって生きていけばいい?「全国大会も夢じゃない」と、今になって思い出してしまった。あれだけ私の活力となっていた言葉は嫌というほど私の心を抉ってきた。ああ、夢で終わってしまったな。もうどう頑張ってもきっとこの展覧会で全国には行けない。現実を突きつけられた私は泣いた。ひたすら泣いた。泣くのをやめようとしても涙が止まらない。私の悔恨だったり、無念だったり、沈痛だったりがこぼれ落ちていった。落ちても堕ちてもその念は止まることはなく、もう、いっそ本当に死んでやろうかとも思ったよ。頑張る目的を失って、みんなにも申し訳なくて。これからはもう何もいいことがないのかもしれないと本気で思ったりもした。___もし、この結末が最初から決まっていたとしたら?あれだけの努力が水の泡になることが定められていたら?考える度に頭が痛くなって、身体が重くなって、いてもたってもいられない。だからといって暴れる気力なんてのはない。今日に関しては、心が私を許してくれなかった。泥のように、ベッドと毛布の隙間に身体を挟むことしかできなかった。もうどうすればいいんだ。もういっそ、誰か、私を殺してくれ。

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