第10話 募る
審査が終わった。これは、入選したかどうかがわかるだけで、まだ全国審査ではなかったけれど。もちろん入選はしていた。去年と同じのを書いて、明らかに上手くなっているのに入選もしないという話のほうが可笑しいでしょ。あくまでも入選は最低限。私の審査はここからなのだ。全国審査を行うため、地区ごとに数名の作品を推薦して審査に出すのだが、ここで推薦をもらっていないと、審査すらしてもらえないのだ。実はそのことは入選の知らせのときには教えてもらえなくて、しばらく気がかりに思ってた。それから2週間くらいしてやっとそれを耳にした。私の作品は、無事推薦されて、全国の審査をされるということだった。とにかくほっとしたし、嬉しかった。体温が全部そこに集中しているんじゃないかってくらい顔が熱かった。喜びとか安堵とか緊張とかが全部混ざってた。全国審査まではあと1ヶ月くらい、展覧会の搬入の日だった。それから私は口を開けばそのことをずっと気にしてるような審査botになっていた。だって怖いもん。我ながらあのときはうるさかっただろうな。多分何回も同じようなことを言って飽き飽きさせただろう。ごめん。でもみんなのおかげで不安に押しつぶされずにいられた。例えば、隣で世界史の自己採点で一喜一憂している人がいて。だいぶ分析を重ねている様子だった。ええー…って言っているときもあれば、うわーあってる!って喜んでいるときもある。全く感情の起伏がころころしていて面白い。時々こっちを見てくるのもなおさら面白い。あ、期待していたけど、間違えてたらしい。一瞬固まって問題用紙を見ている。本当にわかりやすい。でも、全体的には思ったより悪くなかったらしい。なんていうのを見ていたら、気が楽になる。みんなの些細な行動が私の心を癒やしてくれた。感謝してもしきれないね。これは部員だけに留まらずみんなに伝えたいな。全国に行って、恩返しをしようと思ってた。
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