第3話 道の始まり

部活に入ってからの私は、1年生ながら「来年に必ず全国大会に出る」という一つの目標だけを見ていた。ただひたすら、がむしゃらに書いていた。私は幼少の頃から書道教室に入っていた。中2のときに特待生になったきりやめてしまったんだけれども。そんな馴染みのある書道に触れていられる時間が久しぶりにできて嬉しかった。ずっと書道は好きだったし、教室をやめてからは学校の授業とかでしか筆を持っていなかったから。入部して初日。驚嘆に値することがあった。墨の濃度の違い。豊富な筆の種類。紙までも、私を興奮させるほど多様だった。墨なんて、スーパーとかで売っている墨液しか使ったことがなかったから、良質な墨を初めて使ったときの感動は今でも忘れられない。あとは、筆も。筆一つ違うだけで、作品の書風がガラリと変わるんだって気付かされた。穂が柔らかいものはタッチもしなやかだし、一方で穂がしっかりしているものは重厚な作品に仕上がるものだ。そんな正反対になるかよって思うかもしれない。けど、ほんとなんだ。この墨も筆も紙もこれから作品に合わせて自由に使っていいんだ!心が躍ったね。それから2、3日経ったくらいに、なんと同級生の子が二人も入部してくれた。なんでこんな感情が乗ってるのかって?そう。入部当初1年生の部員は私一人だったのだ。二人が入部した日の部活終わりは、昇降口で3人集まって、これから頑張ろうねって励ましあった記憶がある。うわあ懐かしい。もちろんその二人は今となっては親友だと私は勝手に思っているわけだ。ちょっと賑やかになった書道部。私の書道部としての初めての作品はごく一般的な半紙に「大道無名」って四文字を書いただけのものだった。もちろん下手だったよ。その分次の作品は絶対に自分の納得いくものを書くんだって決意もした。次は学校の文化祭に展示するための作品づくりで、ここで初めて色紙(いろがみ)を使った。加工紙であるから普通の紙とはやっぱり勝手が違った。でも楽しかった。これはあまり時間をかけずに書き上げたが、個人的には割と好きだなって思えるものに仕上がった。当日見に来てくれた人に私の作品が印象に残ったって言ってくれる人もいて、それもまた私の部活に対する温度を上げた。そうして文化祭は無事に終わり、一段落ついて、さあ次の展覧会への出品作を作るぞとなったとき。ここで、私の書道人生において圧倒的に魅力を感じた古典と出会うことになるのだ。

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