第8話 嬉しくて、そのまま……

 結局、ハグしたままだと帰れないということで、俺とふーちゃんはハグをやめた。 ただ、その代わりに、ふーちゃんが俺の右腕に抱きつくことになった。


「えへへ」


 ふーちゃんの頬が緩みきっている。 可愛い。


 ちなみに、修二と紫音とは途中にある駅で別れた。 中学が同じであり、家の方向も同じとはいえ、二人の家は高校から少し遠い。 そのため、二人は電車を使っている。

 一応、自転車を使った方がお金もかからないし、楽なのでは?っと思ったのだが、自転車だと寄り道するときに不便だということで使わないことにしてるらしい。 その代わりに修二はアルバイトをして定期代を稼いでいる。 あと、紫音の家は金持ちなので、そもそも定期代には困らないとのこと。



「そういえば、紫音ちゃんが言ってたんだけど……ゆーくんって勉強できるようになったの?」


 頬が緩みきっていたふーちゃんが、ふと思い出したかのように俺に質問をしてきた。


「ん? まー、それなりには、できるようになったよ」

「それなり、って学年一位って聞いたけど?」

「まー、うん。 毎日、少なくとも二時間は勉強するようにしてるからね」


 俺が答えると、ふーちゃんの目が見開くが、すぐに頬をほんのりと赤く染めながら口を開く。


「その……勉強するようになった理由も、クラスで聞いたんだけど……ほんと?」

「~~っ!」


 誰だよ! 教えたやつ! すごく恥ずかしいんだけど!?


「えっと、うん。 その、ふーちゃんと会ったときに胸を張って、隣に居られるようにしたかったから」

「―――っ!!」


 ふーちゃんの顔が茹でダコのように赤くなり、俺の右腕を抱きしめる力も強くなる。

 そして、俺も顔が暑い。


「その、私もね。 頑張った、よ? その、ゆーくんと再会できたときに、幻滅されたくなかったから……だから、ゆーくんも同じように、頑張ってるって知って、すごく嬉しい」


 ふーちゃんが顔を真っ赤にしながら、上目遣いで、そう話す。

 そうか、ふーちゃんも同じだったんだ。

 そのことが嬉しくて、思わず俺はふーちゃんを抱きしめる。


「ゆ、ゆーくん?」

「ふーちゃん、好きだよ」

「~~~~~っ! 私も好き」


 俺とふーちゃんの顔が近づき、唇と唇が重なった――

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