第2話 プロポーズ
小学二年――正確には小学一年が終わり、小学二年に上がる前の春休みのあの日、俺はふーちゃんから引っ越しの話をされ、そして告白された。 ふーちゃんが引っ越しするのは悲しく辛かった。 でも、それ以上に告白してくれたのが嬉しかった。 俺もふーちゃんのことが大好きだからだ。
それなのにふーちゃんは、まるでもう一生会えないかのように「バイバイ」と言ってきた。 だから俺は叫んだ、「俺も好きだ」と「またいつか会おう」と。 そして、結婚の約束をした。
他人から見たら、子ども同士の軽い約束に見えるだろう。 でも、俺にとっては大切な約束なのだ。 そして、俺たちは高校生になり、再会した。
ふーちゃんは、どうなのだろうか……約束を覚えているのだろうか、守ってくれているのだろうか。 それは本人に聞けばいい。
だが、今の俺にそれを聞く余裕はない。 それどころではないのだ。
今、俺は再会したふーちゃんと抱きしめ合っている。 もうそれはそれは、強く抱きしめ合っている。 そのため、俺の身体に押しつけられているのだ、そう、そのほどよく大きく実った胸という名の果実が――
そのうえ、くっついているから分かる。 めっちゃいい匂いがする。 えっ? 女の子ってこんなにいい匂いするの?
やばい、理性がどんどん削れていってるのがわかる。
「――ゆーくん。 本当にゆーくんだ。 ぐすっ、やっと、やっと会えた」
ふーちゃんは、俺の胸に顔を埋めているのだが、その声は明らかに震えており、泣いているのだと分かる。
俺はなんとか理性を保ちながら、言葉を紡ぐ。
「うん、そうだよ。 上山優真だよ。 やっと会えたね、ふーちゃん」
「うん! 会いたかった、ずっと会いたかったよ、ゆーくん! えへへ」
ふーちゃんが顔をあげる。 その顔は、涙を流しつつも、満面の笑みを浮かべていた。
やばい、可愛いすぎる。
「ゆーくん……約束覚えてる?」
ふーちゃんが少し不安そうな表情をして問いかけてきた。
約束とは、あれしかないだろう。
「うん、覚えてるよ。 結婚の約束でしょ?」
「うん! 私――」
「俺、今も、ふーちゃんのことが好きだ。 大好きだ!」
「――!」
俺はふーちゃんの言葉を遮り、告白をする。
あのときは、ふーちゃんから告白をしてくれた。 だから、今度は俺から告白をしたいと思っていた。
俺の言葉に、ふーちゃんが目を見開き、顔を赤らめる。
多分、俺も同じように顔を赤くしているのだろう。 顔が熱いし、心臓がバクバク言っている。
「だから、ふーちゃん……俺は、あの日の約束を果たしたい。 俺と……結婚してください」
「うん。 うん! 私もずっと、ゆーくんのことが好き! 大好き! だから、こちらこそよろしくお願いします!」
ふーちゃんが先ほどよりも多くの涙を溢しつつも、先ほどよりも満面の笑みで答える。
その返事が嬉しくて、その可愛い笑顔が愛おしくて、俺は左手で抱きしめつつ、右手でその頬に触れた。
ふーちゃんは、一瞬びっくりした表情を浮かべたが、すぐに嬉しそうな顔をし、「すりすり」と俺の右手に頬を擦り付けてきた。 俺は、そんなふーちゃんを可愛いと思いながら見つめる。
すると、ふーちゃんと目が合い、見つめ合う。
その綺麗な黒色の瞳からは、何かを期待するかのように思えた。
しても良い……ってことだよな。 いや、そもそももう我慢できないな……
俺は顔をふーちゃんの顔に近づけた。
ふーちゃんもそれに答えるかのように、顔を近づけた。
そして、そのままお互いの唇同士が近づき――
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