第17話 京都散策
普通列車の車窓から田舎ののんびりとした風景がゆっくりと流れている。電車の揺れに合わせて楓と瞳の心に吾郎の話が響く。
「現場での仕事は本当にきつかったんだけど、それはそれで楽しかったんだ。ほら、僕が手伝った部分はこんな感じで・・・」
吾郎はスマホで撮った画像を見せ、一つひとつの作業を詳しく語った。
楓と瞳は吾郎の話に耳を傾け、建築現場での肉体労働が女性にはきついとはいえ、自分たちも経験してみたいなという淡い希望を感じた。
そこで得られる経験や見識は、例え無理をしてでも得る価値があると確信したからだった。
「それにしても凄いわね。あなたが実際に手を動かして作り上げたものを見たいわ」
瞳が言い楓も頷き続く。
「ハンズオンの経験って、たくさん学べることがあるよね。私ってちびだからさ!羨ましいな。バストサイズ5cm小さくなっても良いからその分身長に回したいくらいよ!」
そう付け加えたが、吾郎は別に今のままの楓で良いじゃないか!と思う。
小柄てエネルギッシュ!それが楓だと。
それから3人は一路京都へと、順調に乗り換えを済ませていく。
訪れたい建築物のリストを見ながら、観光半分、勉強半分だがこれからの学びを、より有意義なものにすると期待した。
もちろんどんな建物があるのかは、ネットで調べて知っているが、教授が言っていたのは写真と自分の目で見るのとでは、得られる情報には雲泥の差があると。
吾郎の父も自分が設計した建物は、建設中何度も足を運んでは設計通りに工事が進んでいるか確認していた。
写真だと気がつかないミスも、現場に足を運ぶと見付かる事があると言っていたことを思い出す。
もちろんなしくずし的に彼女?になった好きな女性2人との初めての旅行は心が踊った。
3人が京都に到着するとまずは【祇園】に足を運んだ。
祇園は、日本の伝統的な建築様式と芸舞妓文化が息づく地域であり、和と洋のコントラストが見事に調和している。 古くから伝統的な町並みが残っているが、洋風の建物やカフェなどもあって、独特な雰囲気が漂っている。
細い路地を散策しながら、和の要素と洋の要素が絶妙に融合した建物や景色を楽しんだ。
祇園で散策していると、ふと目に止まった一軒の茶屋に誘われるかのように立ち寄った。茶屋の中には美しく着飾った芸舞妓たちがお客をもてなしていた。
3人は芸舞妓たちの優雅な所作や美しい衣装に見とれた。
「あの人たち、すごく素敵だね。あんなふうになりたいな!」
瞳は芸舞妓たちの伝統的な美しさや品格に憧れた。
「そう?私は、あんなふうになりたくないな。自由がなさそうだし、縛られてる感じがする」
楓は芸舞妓たちの厳しいしきたりや決まり等が息が詰まると感じた。
「でも、あの人たちが自分自身で選んだ道だよ。それに、あの人たちのおかげで、日本の伝統文化が守られてるんだよ。まあ、確かに厳しい修行が待っているらしいね。人それぞれ感じ方が違うのも興味深い」
2人は吾郎の言葉にそうだよねと呟き、直ぐに意見がぶつかったことを忘れてまるで姉妹のように仲良くしていた。
その尊い姿に、仲裁に入った吾郎はほっとしたが、多分そんな事をしなくても大丈夫だったんだろうなと思いつつ、来て良かったなと思う。
吾郎は芸舞妓たちの役割や貢献を認めていた。
3人は芸舞妓たちについて様々な意見を交わしながら、お茶とお菓子を楽しんだ。
楓の意見はあくまでも自分がやりたいか否かであって、見る分にはノリノリだった。
偶々芸舞妓を知って貰おうと企画された出張イベントで、普段接することのまず出来ない芸舞妓たちと触れあってもらう目的だったようだ。
3人は祇園の建築物だけでなく、祇園の人々や文化にも興味を持ち、それらを知ることにも楽しみを見出した。
また【二条城】にも訪れた。
二条城は日本の歴史的な建造物であり、和の要素が随所に見られる。しかし、洋風の要素も巧妙に取り入れられており、バランスの取れたデザインが特徴だ。
ここでは建築規制の厳しさを感じながらも、和と洋の融合が生み出す美しい景観に感動した。
特に吾郎は実際に手を動かして建築物を作り上げる経験を通じ、このようなバランスの取れたデザインの重要性を理解していた。
その後も京都の様々なエリアを訪れながら、和と洋のバランスが見事に成り立っている建物や景色を楽しんだ。
京都特有の魅力に引かれ、建築に対する新たな視点を得ることができた。
それぞれが自分たちの視点と経験値を得る、有意義な時間が待ち受けていた。
道中の電車の中で、3人は興奮しながら見聞きしたことを語り合ったり、芸舞妓さんと一緒に撮った写真に一喜一憂していた。
和と洋の織り成す絶妙な建築物を見るたびに、感動や驚きや感心を表現し、互いに意見を交換して学び合った。
彼らは建築物だけでなく、その土地の文化や歴史や人々にも興味を示し、旅を通して建築の奥深さや魅力を再発見した。
自分たちの夢や目標を再確認して信頼と友情を深め、この旅を忘れられない思い出として心に刻んだ。
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