破綻の設計〜一級建築士への夢と禁断の絆！３人の許されざる歪な恋の物語〜

第18話 ホテルへ向かう

　京都の古い町並みの外れにあるホテルのフロントにて2人に謝る瞳。

「ごめんなさい、ごめんなさい！」

　瞳は涙目で頭を下げた。

　瞳は宿の予約を担当することになり、ネットで見つけた素敵なホテルにメールで申し込んだと思っていたが、しかし、実際には予約が完了していなかったのだ。

「申し訳ございませんが、こちらには瞳様や港様のお名前はございません」

　ホテルのフロントの女性は冷たく言った。

「確かに予約メールがあります！」

「予約の完了のメールは届いていますか？」

　瞳はスマホを確認したが、確かに予約の確認メールしかなかった。そこで初めて彼女は自分の不注意に気づいてショックを受けた。楓と吾郎も困惑した表情を浮かべた。

「どうしよう、どうしよう。」

　瞳はパニックになったが、取り敢えずお辞儀をしてホテルから出た。

「今日は土曜日だし、他の宿も満室だろうし、どこにも泊まれないよ」

「落ち着いて、瞳。予約サイトで完了しているか僕も楓も確認しなかった。３人のミスだから責任を感じないで。何とかしてみるさ」

　吾郎は彼女の肩を握った。

「大丈夫だって。僕がネットで探してみるからさ。２人も一応探してよ」

　吾郎はスマホで検索を始めた。しかし、やはり繁忙期の京都では、空きのある宿はほとんどなかった。あるのはあるのだが、10万円を超えるところしかなく無理だった。

　吾郎は焦りを感じながら、キーワードを変えてみた。すると、ひとつの記事が目に飛び込んできた。

「繁忙日の観光地で宿がとれなかったあなた！繁華街のファッションホテルなら泊まれるよ！」

　吾郎はその記事を開いてみた。

　そこには大阪のミナミにあるカラフルで派手なファッションホテルの写真と紹介が載っていた。吾郎はそのホテルの名前を調べてみると、なんと予約なしで泊まれることが分かった。

　但し、援助交際で頻繁に使われる、そういうホテルだが、予約無しで宿泊費可能だ。しかも、援助交際で使われるから短時間の利用が多く回転率は高いはずだとも書いてある。

「これだ！」

　吾郎は思わず声を上げた。

「瞳、楓、見てみて。これなら泊まれるかもしれないよ」

　吾郎はスマホを瞳と楓に見せたが、２人はその画面を見て、目を丸くした。

「え、これって……」　　

　瞳は言葉に詰まった。

「ファッションホテルって、あの……」

　楓も同じく言いよどんだ。

　２人はその記事の内容を理解できずに固まった。援助交際という言葉の意味を知ってはいるが、実情は知らないし縁のない話だ。

　ファッションホテルというのは、カップルが一夜を過ごすためのホテルであることを、ラブホテルの別の言い方だと2人は知らなかったのだ。

「まあ、とにか、泊まれるならいいじゃないか。２部屋とればよいだろ？」

　吾郎は気を取り直した。　

「大阪まで電車でも一時間くらいだし。名古屋はもう無理だよ」

「そうだね。他に選択肢がないし」

「うん。このホテル、すごく派手だね」

　瞳に続き楓も同意した。

　３人はその記事に載っていたファッションホテルの写真を見ながら、不思議そうに笑った。彼らはそのホテルがどんな場所なのか、まだ想像できていなかったのだ。

　ラブホテルとは分かっただろうが、入ったことはないからよく分からない。

　２２時頃になり、結局、彼らは大阪に向かった。

　ミナミの繁華街に着くと彼らは人ごみやネオンに圧倒される。

　彼らは、その記事に書かれていたファッションホテルの場所を探して向い出した。すると目立つ看板にそのホテルの名前が書かれているのを見つけた。

「あ、あれが……」

　瞳は指さした。

「あのピンクの建物が……」

　楓も驚いた。

「あのハートの形の窓が……」

　吾郎も呆然とした。

　３人はそのホテルの外観に息をのんだ。それは、まるでおとぎ話の世界のような、キラキラと輝くピンク色の建物だった。その建物の入り口には、大きなハートの形の看板が掲げられていた。その看板には、次のように書かれていた。

「ファッションホテル・ラブリーへようこそ！

　あなたの夢の一夜を叶えます！

　お好みのお部屋をお選びください！

　料金は、3時間3000円から！

　延長は、1時間1000円です！

　ご予約は不要！

　お気軽にお越しください！」