第31話(戦艦大和の最期・大日本帝国海軍の終焉)

三十一話(戦艦大和の最期・大日本帝国海軍の終焉)


勝和20年(1945年)4月7日、沈みゆく『信濃』を気遣う余裕がない程に、『大和』への米軍艦載機の来襲は続いていた。

もともとの計画が無謀である事を承知で行われている作戦ですらない行為である。特攻とはそういうものだ。

『大和』の乗組員は懸命に戦った。しかし、多勢に無勢であることは否めない。

機銃座に配置された兵たちは敵戦闘機の機銃に斃れていき、防空能力はどんどんと削がれていく一方だった。

『大和』は、左舷に雷撃を集中されて注排水システムの限界は既に始まっていた。継戦能力も失った結果残された選択肢は乗員の退艦命令を下す事のみとなった。

伊藤整一提督は、

「残念だがここまでだ。総員退艦を命ずる」

と指示を出したあと艦橋の個室に入り、鍵を閉めた。

「総員上甲板離艦用意」

伝声管を通して艦内全体に退艦命令が伝えられた。それでも、逃げきれない者や浸水で溺死していた者たちが犠牲となり、救助された乗員は全体から見たらごく僅かであった。

『大和』は断末魔の叫びの如く真っ二つに船体が割れて爆沈した。


ここに至り、大日本帝国海軍は日清・日露と続いてきた栄光の歴史に幕を閉じ、その歴史は終焉を迎えるに至った。


この日、鈴木貫太郎内閣が組閣された。

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