第24話(学徒出陣の波と大東亜会議)

二十四話(学徒出陣の波と大東亜会議)


勝和18年(1943年)10月21日、明治神宮外苑で出陣学徒壮行式が開催された。帝国日本は徴兵において学徒動員をしなければならないほど追い込まれているのである。

同年11月、帝都東京で開かれる大東亜会議への出席要請が札幌政府にも来た。

「帝国日本の国策行事だけど一応は行かなきゃいけないわね」

矢矧須津香<ヤハギスツカ>大首領は御影平浩成<ミカゲダイラヒロシゲ>と会議出席の為に東京へと向かった。


大東亜会議そのものは形式的なものに終始して閉会した。その後に、矢矧らは東条英機総理らと会談を行った。

「単刀直入に申しましょう。軍事技術ではなく兵力を提供していただきたい」

それに対して矢矧は、

「海上防衛力に乏しい我が国は、南方戦線ではお役に立つ所かお荷物となることでしょう」

「では、具体的にはどうされるおつもりか?」

「我が国は、南樺太死守に全面協力する旨をお約束します。共にソビエト連邦の脅威から北方の領土防衛を成し遂げましょう!」

「それは良いですな。しかしながら札幌政府は絶対国防圏の維持には協力できないと仰るか?」

「我が国は独立主権国家です。あなた方の都合だけで我が国と我ら札幌民主自由国民の理解を得ることは出来ません。何卒ご容赦ください」

御影平浩成は、丁寧に且つ慇懃無礼な程にへりくだった言葉で東条の追及をかわした。

こうしたやり取りを終えて矢矧らは札幌へと帰国した。

そこには国際的承認欲求を満たしたい、札幌民主自由国民たちの心情が滲み出ていた。

矢矧たち札幌政府は、国内外で更なる難しい舵取りを迫られることになっていくことになる。


帝国日本が札幌民主自由国へ人的戦力・応援要請をしてきたのである。


「札幌民主自由国も兵力を投入して、戦局打開に貢献しろ!ということか」

札幌政府高官から事の事情を漏れ聞いた田ノ浦真守は、苦々しげに顔を顰めながら呟いた。

「我々にも帝国日本の為に犠牲を払えと言いたいのだろうな。この時代の分岐点への深入りは極力控えたいのだがな」


時は勝和19年(1944年)となった。帝国日本はこの先、更に追い込まれていくことになるのである。

札幌政府は決断を迫られていた。

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