第23話(理解者・山本五十六戦死に揺れる札幌政府)
二十三話(理解者・山本五十六戦死に揺れる札幌政府)
勝和18年(1943年)4月にブーゲンビル島上空で、山本五十六聯合艦隊司令長官が戦死したという報せが札幌政府に舞い込んできた。
「とうとう私たちの理解者だった山本長官が…」
矢矧大首領は語尾を詰まらせた。
「海軍の現場トップが戦死する状況だからこそ、我ら札幌民主自由国も帝国日本を支援すべきです!これ以上の帝国日本の戦局悪化は我が国の防衛体制を揺るがしかねます!」
浜風甲<ハマカゼコウ>防衛長官は、熱弁のあまり唾をまき散らしながらまくしたてた。
「本格的な支援には時期尚早かと思います」
斑鳩(イカルガ)大輝副大首領兼財務長官がその熱弁に水を差すように口を挟んだ。
「どういうことだ!言ってみろ!」
浜風甲は怒りに任せて凄んだ表情で斑鳩大輝を睨み付けた。
「あまりにも肩入れしすぎると、わが国の財政は火の車になります。物質・燃料・食糧などが早々に底をつくでしょう。浜風防衛長官、あなたはそれでもなお今すぐに帝国日本を全面的に支援すべきであると仰るのですか?」
「くっ…」
斑鳩大輝に痛いところを突かれた浜風甲は、沈黙せざるを得なかった。
札幌民主自由国はあくまでも主権国家として、自国民の生存を優先する行動を取った。
国際的に大日本帝国の傀儡国家と認識されているのだとしても、本当はそのようなことはないと国際承認させたい思いが政府内に生まれた。
やがてその国際的承認欲求は札幌民主自由国民全体で醸成されていくことになるのである。
閑話④(イタリア降伏)
勝和18年(1943年)9月8日、日独伊三国同盟の一角である、ムッソリーニ率いるイタリアが降伏した。
独裁者の魁であり、ファシズムを標榜してファシスト党を組織した人間に突き付けられたある意味では哀れな結末であった。
ムッソリーニは怒りに溺れし民衆の手によって、非業の死を遂げた。
これによりイタリアの第二次世界大戦は、敗戦という形で終戦を迎えたのであった。
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