第19話(札幌民主自由国の存在意義)

十九話(札幌民主自由国の存在意義)


勝和17年(1942年)6月の日本海軍のミッドウェー海戦での勝利の報せは、遠く札幌民主自由国の地まで届いていた。

「歴史が変わりましたな」

斑鳩勇一郎(国務官房長官)がそう言うと、

「歴史が変わっても帝国日本とアメリカとの圧倒的国力の差は修正されない。戦争の結果は揺るがないわ」

矢矧須津香(大首領)が答えた。

「大日本帝国の敗戦は回避不能であると。では、我々の存在意義はなんなのです?」

斑鳩勇一郎はそう問う。

それに対して矢矧は、

「この戦争の終わらせ方にどう関与するか、かしら。最終的な札幌国の相手はアメリカじゃない。戦争末期に牙をむくソビエト連邦よ!今の内から樺太へ陸上自衛隊を派遣できるようにしておくように田ノ浦(一佐)に伝えておくようにして!」

札幌民主自由国政府の存在意義が示された瞬間であった。


いまだ明確なビジョンに乏しいが札幌政府トップの意思が関係者に共有される契機になったことは確かだった。この頃から札幌民主自由国自衛隊は、樺太方面への支援を強化する旨を帝国日本政府へ通達するとともに、その対ソ防衛体制の強化に勤しむのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る