第11話(札幌国から帝国日本への軍事技術の提供範囲の迷い)

十一話(札幌国から帝国日本への軍事技術の提供範囲の迷い)


「貴殿らも同じ日本語を話す者同士ではないか!何故帝国に全面的に協力しないのか!」

外務大臣の語気の強い発言を皮切りに日札技術協力に関する会議が始まった。

「我々はなんの後ろ盾もありません。大首領である私が女性であるだけでも嫌悪感を示しておいでではないですか?」

矢矧須津香(大首領)はそう返した。

「婦女子が政治に口を出す必要は我が国ではない!」

「そこです。あなた方の常識は我々の常識とはことなるのです。札幌民主自由国の理解を深めていただけなければ協力関係に影響が懸念されます。」

矢矧は感情的になりすぎないように努めて落ち着いた口調で答えた。

外務大臣はそれすらも癇に障ったのか何かを怒気をこめて怒鳴りかけたその時、

「論点を戻しましょう。札幌国側からの我が国への技術供与に関する話が本題でしたな」

意外にも冷静に話題も空気も元の流れにコントロールしたのは東条英機(総理兼陸軍大臣)だった。

「我々にはあなた方の進みすぎた技術の内で我々が運用しやすい技術を優先して提供していただきたい。あなた方は我々よりも考え方が米英寄りに感じますが、さもありなんですな。本来ならこの時代に居てはならない人々、それがあなた方の正体でしょう。それを承知でお願いする」

この時の東条はどこか腹を括ったかのような覚悟を持っているようであった。

(意外と責任感の強い人物なのかもしれない。私たちの知る東条英機像とはかけ離れているわね)

矢矧須津香は率直にそう思った。

(ここまで帝国日本に肩入れした以上私も絞首刑ね。最悪のケースを回避する立ち振る舞いが求められるわ)

矢矧須津香大首領はこの時点で歴史の一線を越えた。札幌国は枢軸国側に与したのである。だからといってドイツ・イタリアとも同盟関係になったわけではなかった。またそれを望まなかった。

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